大学院生3名が日本建築学会で若手優秀発表賞を受賞しました

大学院総合理工学研究科総合理工学専攻(建築土木コース)の野村渉さん(指導教員=工学部建築学科・小沢朝江教授)と工学研究科建築土木工学専攻2年次生の村上菜月さん(指導教員=同・中野淳太准教授)、1年次生の辰巳綺菓さん(指導教員=小沢朝江教授)がこのほど、2021年度日本建築学会大会で若手優秀発表賞を受賞しました。9月にオンラインで開かれた学会で発表した研究成果が評価されたものです。

野村さんは「今和次郎・竹内芳太郎設計による茨城県新興農場の移住家屋の設計案とその位置づけ」をテーマに発表しました。建築家・今和次郎が茨城県の依頼を受けて設計した開墾地住宅の計画経緯と特徴を検討し、弟子の竹内芳太郎と共同で設計したことなどを紹介。土間を家族生活の中心とし、動線や利便性、衛生面に工夫すると共に、後年の増改築を予想した可変性の高い平面だったことを明らかにしました。修士課程在籍中から取り組んできた農村部の住宅改善について、建築関係のコンサルティング業に従事しながら研究を続けてきた野村さんは、「コロナ禍で思うように研究を進められない時期もありましたが、修士に続いて2度目の受賞となり光栄です」と話しました。

「色光照明による色印刷に対する色恒常性の影響」をテーマにした村上さんは、印刷物にさまざまな色の使用が増え、屋内外の照明もLEDによるカラー照明が増加していることで、文字・背景色、照明色の組み合わせによっては見にくくなると指摘。照明の条件が変わっても色を不変に見せる視覚特性である「色恒常性」が、色光照明による色印刷の見え方にどのような影響をおよぼすかを実験した研究成果を報告しました。「学部生のときに環境工学の授業などで照明色が人体に与える影響に興味を持ち、光環境の研究室に入りました。今回の実験では色恒常性の影響は見られませんでしたが、これまで色光照明に関するさまざまな基礎研究に取り組んできたので、社会でどのように発展していくのか楽しみ」と語りました。

辰巳さんは「近世における門の建築彫刻の題材選択とその意味」と題し、社寺・御殿等の門の表と裏の建築彫刻を比較して題材の使い分けと意味を調査・研究してきた成果を報告。「社寺は表だけに彫刻を施すか、表と裏で類似した題材を選ぶ例が多いことから、表を重視し、門を社寺の顔であると位置づけて題材が選択されたと言えます。一方で御殿の門は表と裏で異なる題材を持つ例が多い。表は来場者への敬意や長寿を願い、裏は権力の不介入など使用者の意向を示すことから、内・外の使用者の視線で選択されたと推測できます」と説明しました。「題材一つひとつに作り手や住人の思いが込められており、美術作品とは異なる、人間味のあふれた道具としての姿を見ることができました。受賞の知らせは驚きましたが、素直にうれしいです」と喜びを語っています。