海洋科学博物館で「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス講習会」を開講しました

海洋科学博物館で10月27日に、学生と本博物館の学芸員を対象とした「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス講習会」を開講しました。国内唯一となる体長18mのピグミーシロナガスクジラの全身骨格標本を収蔵している本博物館は、2024年10月に一般公開を終了したことから、その展示状態を記録に残すため、同年12月に一般社団法人路上博物館の代表理事・館長の森健人氏と理事・齋藤和樹氏、ふじのくに地球環境史ミュージアムの渡辺友美氏から提案を受け、25年3月に共同で骨格標本の3Dデータを作成しました。今回の講習会は、3Dデータの公開方法を検討するにあたり、著作権のルールや考え方について理解を深めようと開いたものです。前出の3名が講師を務め、学芸員課程を履修する学生と学芸員約30名が参加しました。

開講にあたり、村山司館長(海洋学部教授)が、「近年、資料や標本をどのように記録して残していくかが重要になっています。3Dデータの取り扱いや著作権は不明点も多く、専門家から学ぼうと企画しました。今回の講習会での学びを日ごろの活動につなげてもらえたら」とあいさつしました。渡辺氏の講演では、約70年ぶりの改正を経て23年度から施行されている博物館法に、博物館資料のデジタル記録が博物館の業務として明記されたことを説明。著作権侵害などデジタルアーカイブの公開におけるリスクや、著作物の利用条件をマークで示す「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」(CCライセンス)について紹介しました。続いて、博物館来場のきっかけづくりを目指し、3Dプリントレプリカを使った路上展示に取り組む森氏が登壇。博物館側が資料にアクセスするハードルを高めていることを指摘し、「解決の一助になるのがデジタルアーカイブです」と語りました。さらに、「日本の法律では、自然物を基にした標本のデジタルアーカイブに著作権が発生するかは明確ではありません。データを保有する個人・組織が公開方法をよく考える必要があります」と呼びかけました。その後のワークショップでは、齋藤氏の進行で参加者がグループに分かれてCCライセンスを活用したピグミーシロナガスクジラの3Dデータの公開方法について議論。出展明記や商業利用の是非、改変の制限など、さまざまな意見が交わされました。さらに齋藤氏がピグミーシロナガスクジラの3Dデータを披露し、学芸員の案内で学生たちが博物館に展示されている実際の骨格標本を見学しました。

参加した学生は、「将来博物館の業務に携わりたいと考えているので、学芸員の方と意見交換できて貴重な経験になりました」「学芸員課程の授業ではアーカイブの作成方法を学び、今回はデジタルアーカイブの著作権問題の講習を受けましたが、インターネット上でデータを公開する難しさを実感しました」と話していました。