河合教授の研究室が所属する研究グループがヒメトガリネズミの繁殖生態を明らかにしました

生物学部生物学科の河合久仁子教授の研究室と札幌市円山動物園、北海道大学低温科学研究所の大舘智志助教の研究室による研究グループではこのほど、ヒメトガリネズミの繁殖生態を明らかにしました。この共同研究は道内に生息する生物を飼育・展示する円山動物園のプロジェクトの一環で、河合教授は北海道大学低温科学研究所にポスドクとして所属していた際に大舘助教の研究室でトガリネズミ類の研究に従事していたことから、2019年から研究に参画しています。

写真提供=札幌市円山動物園

モグラの仲間である夜行性のヒメトガリネズミは、成獣でも体重が3~4g程度と体が小さく代謝が高いこと、生体の捕獲や飼育が難しいことから詳しい生態は明らかになっていませんでした。河合教授の研究室では、札幌市南区に本学が厚生施設として設置していた「銀嶺荘」の周辺や根室市で生体捕獲調査を担当。2021年には円山動物園による飼育技術の確立によって、ヒメトガリネズミの出産と産仔を確認していました。今回は、河合教授の研究室に所属していた久保島慎之助さん(生物学部2023年度卒業)が卒業研究の一環として、円山動物園から提供されたペアリング映像と妊娠個体が出産し子どもが離乳するまでの約1カ月分の飼育日誌を分析。その結果、ヒメトガリネズミは、他のトガリネズミ類と比べて攻撃性が低く、穏やかな接触(じゃれ合い行動)や追尾を伴う独特の交尾行動を行うこと、妊娠期間は25~29日と推定されること、離乳は生後25~30日ごろであること、出生時体重が約0.3gから約20日間で10倍以上の3.5gに急速に成長することを初めて明らかにしました。その成果をもとに、ヒメトガリネズミの繁殖に関する知見を世界で初めて明らかにした論文として、「ヒメトガリネズミの飼育下における繁殖行動と幼獣の成長」を大館博士が執筆。論文は、5月4日付けで哺乳類学専門誌『Mammal Study』に掲載されました。

久保島さんは、「ヒメトガリネズミは代謝が高く、2時間おきにエサを与える必要があります。そのエサも適切な大きさでないとストレスがかかって命を落としてしまうほど繊細です。そのような生き物が野外でどのように生息しているのかなど、まだ解明されていないことも多く、興味深い生き物だと考えています。学生時代に取り組んだ研究成果が、今後のトガリネズミ類の研究や保全に少しでも生かされればうれしい」と話しました。河合教授は、「北海道には、環境省が選定した絶滅危惧種Ⅱ類のトウキョウトガリネズミやヒメトガリネズミなど4種が生息しています。久保島さんは地道な観察と分析を積み重ね、トガリネズミ類の保全につながる研究を成し遂げてくれました」と評価。さらに、「研究室では、学生たちに教室内の学びだけでなく、学外での調査や他機関との共同研究を通じて視野を広げてほしいと考えています。さまざまな立場の人々との交流から得られる学びは大きく、そうした経験は社会に出てからも必ず役立つはずです。今後も多様な機関と連携しながら、実践的な学びの機会を提供していきたい」と話しています。