海洋理工学科海洋理工学専攻の脇田教授が「Juntos!!中南米対日理解促進交流プログラム」で講義を担当しました

海洋学部海洋理工学科海洋理工学専攻の脇田和美教授が、オンラインで4日間開催された「Juntos!!中南米対日理解促進交流プログラム」で10月12日の講義を担当しました。同プログラムは、中南米各国でさまざまな分野において日本との関係強化が期待される若者を対象に、日本の中南米に対する外交政策や日本への理解促進を通じて、親日派・知日派を育成して日本と中南米の絆を深め、外交基盤を拡充することを目的としたものです。当日は、脇田教授が日本語で講義を行い、一般財団法人日本国際協力センターの担当者がスペイン語に通訳しながら進行し、プログラムの参加者約20人が聴講しました。

脇田教授は「海洋の保全と持続的な利用」と題して講演し、はじめに外務省のプログラムでメキシコ環境省のCabo Pulmo国立公園事務所を訪問して海洋保全について学んだ経験談を話した後、本学での研究や生態系サービスについて紹介しました。続いて、昨年出版されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書で「人間活動が海洋を温暖化させたことに疑いの余地がなく、海洋に広範囲で急激な変化が生じている」と発表されたことを説明するとともに、海洋酸性化や持続不可能な過剰漁獲の割合の増加、サンゴ礁の白化など温暖化よる被害について報告。また、生態系保全を目的に設けられている海洋保護区と国際条約「生物多様性条約(CBD)」について解説しました。領海および排他的経済水域の合計面積が447万㎢と、国土面積の約12倍の広さである日本が行う海洋保全活動について、「2019年に新たに行った沖合海底自然環境保全地域の指定や、古くから漁業協同組合が自主的に設定している網目の大きさや禁漁期間などによる資源保護が行われている海域も含め、様々な取り組みにより13.3%を海洋保護区(MPA)としていますが、だからといって安心はできません。CBDの締結国会議では、2030年までに世界の陸と海の30%を保護区にしようという動きがあります。日本も達成に向けて、さらに取り組みを強化していくことが必要です」と話しました。続いて、2050年までにカーボン・ニュートラルを目指すことを宣言した日本が、どのような取り組みをしているか解説。海洋関連では、国土交通省が進める「カーボン・ニュートラル・ポート」や二酸化炭素を吸収する「ブルー・カーボン」として注目される藻場の再生などを紹介しました。さらに、日本が高度経済成長期以降に沿岸を埋め立ててきた過去を説明したうえで、日本国内で干潟再生を含めた里海に取り組む事例として、志摩市で活動する人々に密着したビデオ(国連大学が制作)を上映しました。

講演後には、参加者から「パナマ湾では、生活排水や産業排水が河川から海へと流入する問題がありますが、日本においても同様の問題はありますか。また、その対策と結果はどのようになっていますか」「カーボン・ニュートラル・ポートが企業や町とどのようなかかわりを持つのでしょうか」といった質問が寄せられました。一つひとつ丁寧に答えた脇田教授は、「皆さんの質問が具体的で、しっかりと講義内容を聴いてくださっていると感じました。海洋保全に向けて、日本人ならではの取り組みや考え方も理解いただけたと思います。私自身も皆さんの国や地域の状況を知り、とても充実した時間になりました」と話していました。