生物学部の河合教授の研究室が所属する研究グループがヒメトガリネズミの出産・産仔を世界で初めて確認しました

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

生物学部生物学科の河合久仁子教授の研究室と札幌市円山動物園、北海道大学低温科学研究所の大舘智志助教の研究室による研究グループではこのほど、ヒメトガリネズミの出産・産仔を世界で初めて確認しました。この共同研究は道内に生息する生物を飼育・展示する円山動物園のプロジェクトの一環で、河合教授は北海道大学低温科学研究所にポスドクとして所属していた際に大舘助教の研究室でトガリネズミ類の研究に従事していたことから研究に参画しています。

北海道には環境省が選定した絶滅危惧種Ⅱ類の「トウキョウトガリネズミ」をはじめ、「ヒメトガリネズミ」「エゾトガリネズミ」「オオアシトガリネズミ」の4種が生息していますが、体のサイズが小さいこともあって詳しい生態や繁殖方法などは明らかになっていません。同研究グループは、今年6月に札幌市南区にある本学の厚生施設「銀嶺荘」付近の山中で、8月に根室市内で、トガリネズミ類の捕獲調査を実施。捕獲された15個体のヒメトガリネズミを円山動物園で飼育したところ、2個体の妊娠が確認され,9月に計13産仔が確認されました。野生下、飼育下のいずれにおいても、ヒメトガリネズミの産仔の報告は、過去に記録がなく、今回のように、生きた状態で妊娠個体を捕獲し、その後、飼育下での出産事例は世界初の報告ではないかと考えられています。

河合教授は、「トガリネズミ類の捕獲は、生息するポイントに100カ所ほど落とし穴を仕掛け、穴の中で弱らないよう夜中に2時間ごとに見回る必要がある過酷な作業です。今回は学生たちが中心となり穴掘りを頑張ってくれました。大学内では生物の飼育に制限があるため、プロが集まる動物園との共同研究から得られるものはとても多く、学生たちには最先端の設備を使った研究だけでなく、生物を観察する目を養う飼育がとても大事な研究のベースであることをあらためて知ってもらえたと思います」と話しました。

また、河合教授の研究室では専門とするコウモリの音声分析技術を応用し、所属する4年生が卒業研究としてヒメトガリネズミが発する音声に関する研究に取り組んでいます。河合教授は、「生物の研究は、飼育下でないと解明できないことがたくさんあります。円山動物園や大舘先生の研究室との共同研究を通じて、互いのノウハウを生かしさまざまなテーマにチャレンジしていきたい」と語っています。