生物学部と大学院生物学研究科のFD・SD研修会「生成AI:教育・研究分野における活用」を実施しました

札幌キャンパスの生物学部と大学院生物学研究科では1月12日に、マルチメディアホールでFD・SD研修会「生成AI:教育・研究分野における活用」を実施しました。世界的に注目を浴びるChatGPTをはじめとする生成AIは大学教育や研究分野にも影響を与えています。今回の研修会は、東京大学次世代知能科学研究センター教授で、同大学大学院情報理工学系研究科附属情報理工学教育研究センターの松原仁氏を講師に招き、進化する生成AIの最新情報や迫りくるAI時代についてうかがい、教育・研究分野における生成AIの活用を検討するうえで必要になる基本的な事項を整理し、教育・研究活動での応用を考える機会にしようと企画したものです。国際文化学部の教員やウチムラカンゾウカレッジ札幌オフィスの職員も含め計64名が出席しました。

当日は、初めにFD委員のサバウ バシレ ソリン教授(生物学部生物科学科)が研修の意義について説明した後、松原氏が登壇。通産省工業技術院電子技術総合研究所、公立はこだて未来大学教授を経て東大AIセンター教授に着任し、小説や脚本、マンガなどを生成するAIの研究に取り組んできた自らの経歴を紹介した後、AI技術を使って漫画家・手塚治虫を現代によみがえらせることを目指した「TEZUKA2020プロジェクト」や「同2023プロジェクト」の概要を紹介しました。続いて、ChatGPTなど生成AIに用いられるディープラーニングなどの技術や、2022年の終わりごろに登場したChatGPTの仕組み、AI研究の歴史について解説し、「ChatGPTはときどきうその情報を出しますが、故意に間違えているわけではなく、もっともらしい答えを選んで回答を出しています。要約や翻訳を得意としていて、いわゆる優等生的な回答をすることが特徴。改良版であるGTP-4ではアメリカの司法試験の合格点を取り、アメリカと日本の医師国家試験にも合格できる能力を持つと言われています」と紹介しました。

そのうえで、ChatGPTと教育のあり方について「ChatGPTを使ったレポート作成などを禁止することは、判別が困難であるため難しいと言わざるを得ません。うまく使いこなして内容をよくする能力を磨くことが大切になってくるでしょう。ただ、人間の思考がChatGPTの影響を受ける可能性が大きい点には注意が必要です。学生たちには、何をどのように、いつごろ教えるべきかといった根本的な見直しの議論が必要であり、“考える力”をどうつけさせるかが喫緊の課題です」と指摘。「生成AIは画期的な技術で世の中全般を変えていきますが、まだ生まれたばかりの技術で発展途上です。著作権の問題や生成した文章の間違いなど注意すべき点も多い。長い目で見た教育に大きな影響があるので、文章の出所を確認するなど倫理の問題や英語翻訳時の使用方法にも配慮しなくてはなりません。現状では便利な道具として一点の距離を保ちつつ使うことが望ましいと考えられます」とまとめました。

続いて質疑応答も行い、「研究者の間で論文を査読する際にChatGPTを使用したらどうかという議論がありますが、未発表の研究成果をChatGPTに入力することで内容が漏洩してしまうなど問題はないのでしょうか?」「回答のゆらぎを自分の用途に合わせて学習させ、カスタマイズできるものでしょうか?」「論文を検索する際にはキーワードを入力して探しますが、そうして出てくる情報には存在しないものもあります。なぜそのようなことが起きるのでしょうか?」など多数の質問が上がり、松原氏が一つひとつ丁寧に回答しました。