海洋文明学科の脇田和美教授が日本沿岸域学会の「論文賞」を受賞しました

海洋学部海洋文明学科の脇田和美教授がこのほど、日本沿岸域学会の「論文賞」を受賞しました。同学会は、1988年1月に「日本沿岸域会議」として設立され、95年5月に現在の名称に改称。沿岸域にかかわるあらゆる問題を総合的に議論できる自然科学、社会科学、人文科学の各分野が融合した学際的な学会です。同賞は、この1年間に学会誌に掲載された論文の中から最大2件が選出され、学術の進歩に寄与する優れた論文を対象に贈られます。受賞は7月27日に発表され、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンラインで授賞式が開催されました。

脇田教授の論文は「貝毒発生時の潮干狩り場における食の安全対策とその意義~大阪府内での取り組みと新聞報道から~」で、沿岸域学会誌の2020年12月号に掲載されました。研究テーマに選んだ潮干狩りは、夏のレジャーとして全国で行われており、漁業者の重要な収入源としても全国に広がっています。しかし、近年では海洋環境の変化により、有毒なプランクトンを食べたアサリなどの二枚貝が体内に毒を保有するケースが増加しており、各自治体による定期的な監視調査の結果、一時的に閉鎖せざるを得ない潮干狩り場もあります。一方で大阪府内では、採った貝を潮干狩り場の出口で検査済みの無毒の貝に交換する対策を講じており、脇田教授は貝を食べる際の安全確保や伝統文化を継承するための有効な手段として着目。現地でのインタビュー調査によりこの方法の成立の背景や運営の実態を明らかにし、新聞報道という客観的な指標を用いて貝の交換に対する社会受容性を分析しました。

今回の受賞について脇田教授は、「大阪府内の潮干狩り場を運営している淡輪漁業協同組合と(株)二色の浜観光協会の皆さま、貝毒発生時の食の安全管理にかかわる大阪府関係部局の皆さまから、貴重な現場の実態を教えていただいたことで、論文を執筆することができました。また、この研究は卒業研究を通じ、ゼミ生と共に貝毒・赤潮問題に取り組んできた積み重ねの上に成り立っています。これからも、伝統的な海の娯楽と沿岸水産資源の持続可能な利用のあり方をはじめとし、沿岸環境の保全と人間活動による利用のバランスに関する国内外の事例研究を積み重ねることで、望ましい沿岸域の利用と保全のあり方を多面的に検討し、あるべき姿を探求していきたい」と話しています。