第4回「農・食・健」QOLセミナーを開催しました

東海大学では、9月20日に静岡市清水産業・情報プラザで第4回「農・食・健」QOLセミナー(共催:静岡商工会議所新産業開発振興機構、静岡市清水産業・情報プラザ、一般財団法人アグリオープンイノベーション機構、後援:静岡県、静岡市)を開催いたしました。食や健康分野に関連のある企業や行政機関の皆さまに本学の研究成果を紹介し、社会実装を見据えた共同研究などに向けてマッチングを図ることを目的としたものです。今回は、「水産と食の健康について―東海大学のシーズから―」と題して、本学の教員4名が研究成果や知見を紹介。約50名のご来場をいただきました。

はじめに山田清志学長が本セミナーの趣旨を説明し、海洋学部の秋山信彦学部長が学部の教員が取り組んでいる研究などを紹介。講演では、創造科学技術研究機構の浅川倫宏准教授が、自身が取り組んでいる食品有機合成研究について解説し、以前は「虫下し」として使われ、現在はてんかんの治療に役立つのではないかと注目されているカイニン酸や、疲労を抑える効果や尿酸値を下げる効果があるアンセリンなどを例に、「よく効くという情報があれば摂取する人が増え、機能として効く対象が明らかになれば新しい食品や薬につながる。そのための情報提供ができるよう、研究を進めていきます」とまとめました。続いて生物学部の北夕紀准教授が、漁業や水産加工、養殖・種苗産業、観光業など海を取り巻くさまざまな環境について、専門である鯨類の調査・研究を絡めて説明。2015年に日本水族館協会が日本伝統の追い込み漁によるイルカの入手を禁止したことなどにも触れ、「人と海洋生物との関係はさまざまな背景・立場から考えていく必要があります。何かを排除するのではなくWIN-WINの関係を築くことが重要」と語りました。

休憩をはさんだ後半には、短期大学部食物栄養学科の高塚千広准教授が、日本人の魚離れや野菜摂取不足の進行に伴う病気の発生可能性、年齢を重ねるにつれて嚥下障害などが起こり得る可能性も示唆。また、学生と共に開発したライフステージに応じたレシピを紹介し、「静岡は食材の宝庫です。今後も水産物の調理特性を見極めて、料理の可能性を探っていきたい」と語りました。最後に、副学長(医系担当)の坂部貢教授が、妊娠12週までに胎児が母親を介して環境中の化学物質から受ける影響について解説し、自閉症や発達障害と環境中の化学物質との関係などが多く報告されていることに触れ、「体に悪いという科学的なエビデンスが出る前に予防する、予防原則がQOLを上げる基礎になるのでは」と話しました。

セミナー後の情報交換会では、静岡県の難波喬司副知事が、「農業・水産・海洋、そしてヘルスケアは県としても力を入れている分野です。今後もご支援をいただき、発展につなげていきたい」とあいさつ。参加者が食事を囲みながら交流を深めました。

講演のテーマは以下の通りです。
浅川倫宏准教授(東海大学創造科学技術研究機構)※10月から海洋学部水産学科食品科学専攻所属
「海洋由来の食品に含まれる機能性成分の有効利用」
北夕紀准教授(東海大学生物学部海洋生物科学科〕
「QOLの立場から海棲哺乳類との共生を考える」
高塚千広准教授(短期大学部食物栄養学科)
「健康を考えた料理のレシピづくり」
坂部貢教授(東海大学副学長(医系担当)、医学部長)
「外部環境因子とQOL-次世代の健やかな未来のために今できることは?-」

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