第6回東海大学ヨーロッパ学術センターQOLセミナーをオンラインで開催しました

東海大学では5月18日に、第6回東海大学ヨーロッパ学術センターQOLセミナー「ポストコロナの持続可能な観光 -SDGsとツーリズムの発展-」をオンラインで開催しました。本学は日本で唯一、北欧の社会、歴史、文化、言語を研究と教育の対象とする文化社会学部北欧学科を有しており、50年以上にわたって北欧研究の先端を切り拓いてきました。本セミナーは、1970年にデンマーク・コペンハーゲンに開設した東海大学ヨーロッパ学術センターの50周年を記念し昨年度からシリーズ化して開催しているもので、これまでの教育活動の成果を広く社会に還元し、よりよい国際社会づくりに貢献することを目的としています。今回は体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科の押見大地講師、デンマーク観光協会のファンドレイジング&リレーションシップマネージャーのエヴァ・チューボ氏、デンマーク国内でホテルやレストランなど観光業界を支援する団体「ホレスタ」の環境責任者を務めるミカル・ホルト・イエンセン氏、観光学部観光学科の服部泰講師が講演。ヨーロッパ学術センターのヤコブ・スキュット・イエンセン副所長が進行役となり、約75名が聴講しました。

初めに、ヨーロッパ学術センター所長の吉川直人副学長(国際担当)が開会のあいさつを述べ、本セミナーの開催趣旨や理念を説明しました。講演ではまず押見講師が、「日本のスポーツツーリズムの現状と未来」と題し、スポーツの観戦・体験を目的とした旅行や周辺観光を指す「スポーツツーリズム」が観光産業の一つとして近年急速に成長していると説明。また、2019年に開かれたラグビーワールドカップ日本大会を振り返り、「スポーツイベントに参加した思い出やボランティアの経験、運営のノウハウなどは無形のレガシーとなります。東京五輪やワールドマスターズゲームズ2021関西などのビッグイベントに向けてプラットフォームをつくり、しっかりと受け継いでいくことが重要です」と提言しました。続いてチューボ氏が、「政府観光局の観点から見たデンマークの持続可能な観光」をテーマに、デンマークの観光戦略がSDGsの17の目標達成に向けてどのようにかかわっているのかを解説。観光の経済的・社会的・環境的なインパクトと観光地と観光客のニーズを確認しながら、調和のとれた持続可能な観光を目指していると説明しました。また、サステナビリティを求める観光客(Green Idealists)が増えており、それに応えて観光資源でもある“豊かな自然環境”を保つための取り組みを行っていることも紹介しました。

イエンセン氏は、「グリーンキーなどのエコラベルに焦点を当てた企業の視点から見たデンマークの持続可能な観光」と題して講演。環境に配慮している宿泊施設やレジャー施設に与えられる国際的なエコラベル「グリーンキー」について説明し、デンマークと日本の企業による環境保全の取り組みなどを語りました。また、服部講師は「ポストコロナに向けたローカル・アイデンティティとツーリズム」をテーマに、「観光は経済効果をもたらすだけでなく、地域の文化や伝統の継承、インフラ整備など、生活の質を向上させる」と指摘。コロナ禍でもできる取り組みとして、生活圏から約1時間圏内での短距離観光である「マイクロツーリズム」の概要などを紹介しました。

各講演後にはQ&A機能で、「日本ではキャンプ場や公道を使ったサイクリングイベントにおいて、どのように環境に配慮しているのでしょうか?」「デンマークでの観光を日本人に紹介するためのプログラムや支援制度などはありますか?」など多様な質問や感想が寄せられ、活発な議論が交わされました。