バイオサイエンス学科・永井研究室の須川博士研究員が一般財団法人「ウェルシーズ」の助成に選出されました

農学部バイオサイエンス学科の永井竜児教授の研究室(食品生体調節学研究室)に所属する博士研究員の須川日加里さん(大学院生物科学研究科2019年度修了)がこのほど、熊本県内の若手研究者の基礎研究を奨励する一般財団法人「ウェルシーズ」の助成対象に選出。2月15日に熊本市にある同財団で行われた授与式に須川さんと指導教員の永井教授が出席しました。同財団は若き基礎研究者への研究奨励金の寄附を目的として、県内の民間研究機関代表も務めた薬学博士の井出博之氏が2021年に創設。須川さんが最初の助成対象となります。

採択を受けた須川さんの研究テーマは、「動脈硬化の新たな発症機序の解明および予防を目的とした細胞の泡沫化抑制効果を資する天然物の探索」です。動脈硬化の中でもアテローム性動脈硬化は、糖尿病や脂質異常症によって発症リスクが上昇し、脳卒中や心臓病を引き起こす重篤な疾患で、泡沫化したマクロファージが血管内皮に蓄積することによって進展します。マクロファージに取り込まれたLDLコレステロールエステル(CE)は、遊離コレステロールに水解されますが、Acetyl-CoA Acetyltransferase 1(ACAT1)によって再度CEに変換されることが分かっています。このCEの蓄積によってマクロファージが泡沫化するため、ACAT1発現や活性の増加は、マクロファージの泡沫化において重要な働きを持ちます。本研究では、炎症性サイトカインなどの因子によるACAT1発現増加の評価とその機序に対する天然物のACAT1発現阻害効果と泡沫化抑制効果の評価を行います。

須川さんは、「萌芽的研究の可能性を評価していただき、助成に選出されたことは大変光栄です。動脈硬化発症のメカニズムは未解明の部分も多くありますが、予防医学の観点から幅広く研究に取り組みたいと考えています。生活習慣病の予防に向けて、医薬品に限らず日常で多くの人が口にする食品の中からCEを抑える効果の高いものを見つけることが目標です。具体的には大豆やトマトなどをピックアップして成分分析を進めていきます。基礎研究には時間を要しますが、動脈硬化発症の予防戦略を見出せるよう努力していきます」と意気込みを語っています。