【おしえてセンセイ! 04】Q.水道の水をそのまま飲めない国や地域があるって本当?

A.本当です。世界には、安全な水道水を安定して使えない地域がまだ多くあります。

建築都市学部土木工学科 寺田一美先生

日本では蛇口をひねれば水道水が出てきます。直接飲むのはもちろん、料理や洗濯、お風呂などに何気なく使っている人も多いのではないでしょうか。ところが世界を見渡すと、水道水をそのまま安心して飲める環境は、決して当たり前ではありません。これは、高度経済成長期以降に整備され、現在も維持管理されている水道インフラのおかげでもあります。日本では1970年代後半には水道普及率が90%を超えましたが、当時整備された施設や管路の老朽化が現在の大きな課題になっています。それでも、安全な水を安定して届け続けられているのは、水道インフラに関わってきた技術者たちが積み上げてきたメンテナンスの成果です。さらに、使った水を処理し、生活排水を衛生的に管理する仕組みまで含めて整っている国は、世界的に見てもまだ限られています。

アフリカの一部地域や乾燥・半乾燥地域などでは、水道や下水道、廃棄物処理の仕組みが十分に整っていない場所もあります。都市部から離れるほど、生活排水や廃棄物が適切に処理されず、水源や周辺環境の汚染につながりやすくなります。その結果、安全な水や衛生的な環境を得られず、乳幼児をはじめとする弱い立場の人々の命が危険にさらされる現実があります。

ただ、これは海外だけの問題ではありません。日本でも、高度経済成長期以降に整備された水道管が老朽化し、更新や維持管理が大きな課題になっています。もちろん修繕は必要ですが、全国に張り巡らされた管路をすべて一気に更新することはできません。しかも水道管の多くは地下に埋まっているため、どこで劣化や漏水が進んでいるのかを見つけること自体が難しいのです。

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私たちが使った水は下水道を通じて集められ、下水処理場で有機物や浮遊物などが取り除かれた後、消毒処理を経て河川や海へ放流されます。ただし、処理によってすべての物質が完全に取り除かれるわけではありません。特に窒素やリンなどの栄養塩は、一定程度処理されるものの、残った分が河川を通じて海へ流れ込むことがあります。これらは植物プランクトンや藻類の栄養源になるため、過剰に供給されると、赤潮や富栄養化、さらには底層の貧酸素化につながることがあります。

また、水の中では、微生物が有機物を分解する際に酸素を消費します。有機物が多く流れ込み、分解に使われる酸素の量が増えると、水中の溶存酸素が低下します。その状態が進むと、魚や貝、底生生物が生きにくくなり、底泥の中では酸素を使わない分解が進みやすくなります。その結果、硫化水素などの有害物質が発生したり、有機物を多く含む底泥が蓄積したりして、生態系に悪影響を及ぼすことがあります。特に湾内や河口域のように水の入れ替わりが小さい場所では、こうした影響が現れやすくなります。

一方で、石垣島のマングローブ林のような自然豊かな沿岸域にも、有機物を多く含む泥質の環境は存在します。ただし、それは単に「汚れた泥」というわけではありません。マングローブ林、海草藻場、サンゴ礁といった異なる生態系が近接している場所では、潮の満ち引きや海水の流れによって、水や物質が生態系の間を行き来しています。さらに、海草やサンゴに共生する藻類などが光合成を行うことで、水中や底泥周辺の酸素環境にも影響を与えています。

このように、沿岸域では、有機物が単に腐敗して悪影響を及ぼす場合もあれば、生き物の餌や栄養として利用され、豊かな生態系を支える場合もあります。その違いを分ける重要な要素の一つが、酸素がどこで、どれだけ作られ、どこで、どれだけ消費されているのかというバランスです。私たちの研究室では、石垣島周辺のマングローブ林、海草藻場、サンゴ礁のつながりに注目し、沿岸域における酸素循環のメカニズムを明らかにすることで、海洋環境の維持・保全につながるヒントを得ようとしています。

生態系全体を把握する研究は、自然環境だけでなく、人間社会にも深く関わる広い分野です。ただ、その入口は、必ずしも難しい理論や大きな目標である必要はありません。最初の一歩は、「好き」「面白そう」という素直な気持ちで十分だと思います。近年、AIの発展は目覚ましいものがありますが、何かに心を動かされ、試行錯誤そのものを楽しむことは、人間だからこそできることです。少しでも面白そうだと思ったら、ぜひその分野に飛び込んでみてください。途中で興味が変わったり、目標が変わったりしても、まったく問題ありません。むしろ、その変化の中で、自分だけの問いが見つかっていくのだと思います。


てらだ・かずみ 福岡県生まれ。2004年筑波大学第一学群自然学類物理学専攻卒業。2006年東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了(環境学専攻)。2009年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了(環境学専攻)。博士(環境学)。同年、東海大学に着任。専門は、海岸工学、水環境学など。

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