【おしえてセンセイ!15】ワイヤレスで充電ができるしくみをおしえて!

A.「磁界」を利用してエネルギーを送っています

工学部 電気電子工学科 稲森真美子先生

充電器の上に置くだけでスマホの充電ができるワイヤレス充電。電源コードにつながなくても充電できるなんて、不思議ですよね。

この不思議な仕組みに活用されているのが「電磁誘導」と呼ばれる現象です。スマホと充電器の中には、それぞれに電線をぐるぐる巻いたコイルが入っています。充電器に電流を流すと、充電器内のコイルの周りに磁界が発生します。この磁界が充電器上のスマホのコイルに届くと、そこに誘導電流が生まれ、この電流によってバッテリーが充電されるのです。最近は、道路と車の両方にコイルをつけることで走行中の車に給電できるシステムも、実用化に向けて研究が進んでいるんですよ。

ワイヤレス充電では、電気そのものではなく、「磁界を介してエネルギーが移動する」のがポイントです。電磁誘導を用いたこうした技術は、交通系ICカードやクレジットカードのタッチ決済などにも使われています。磁界を介して読み取り機からカードへと移動したエネルギーがカード内に電流を生み、その電流によって作動したICチップが残高などのデータを電気信号で読み取り機に送っているのです。

【関連記事】 置くだけで充電できる仕組みがわかったら、次は「電気をためる・つくる・移動に使う」未来ものぞいてみませんか?
クリーンエネルギーとの付き合い方を教えて
モビリティってこれからどうなるの?
ペロブスカイト型太陽電池って何がすごいの?

ワイヤレス充電の研究の最前線では、「より遠くへ」「より効率よく」「より安全に」電力を届けることが大きなテーマになっています。中でも私が今一番力を入れているのが、コイル間の磁界結合を利用した海洋中での無線給電技術の開発です。研究がさらに進めば、海中ロボットや海底センサーへの安定した電力供給が可能になります。将来的には、海底探査ロボットの長時間運用や海洋環境の常時監視などに役立つと期待されています。

とはいえ、海流や海水濃度などの影響により、大気中と海中では効率よく充電・通信できる仕組みが異なります。そのため、シミュレーションや実験を通して、よりよい仕組みを作るにはどうすればいいかを、学生と日々考え続けています。海洋中の実験データや充電・通信技術のモデルケースはまだまだ少なく、試行錯誤の連続ですが、そこが研究の面白さでもあります。まだ誰もやったことがないことに自分が挑めるなんて、ワクワクしませんか?

スマホのワイヤレス充電はいまでこそ珍しくありませんが、この仕組みに初めて出会った時に「なぜ充電できるんだろう?」と思った人は、少なからずいたはずです。この「なぜ?」と思う気持ちを、ぜひ大切にしてください。その疑問を一つずつひも解いていけば、自分の世界はどんどん広がり、好きな事や夢中になれる事がきっと見つかります。その「好きなことや夢中になれること」がスマホやパソコンの仕組みなど、身近な科学技術から芽生えたのなら、大学では思い切って工学部に飛び込んでみてください! 未来の水中電力伝送技術をつくるのは、もしかするとあなたかもしれません。


いなもり・まみこ 1982年鹿児島県生まれ。2009年慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻博士課程修了。博士(工学)。専門は無線通信、無線電力伝送など。