工学部建築学科と大学院工学研究科の学生たちが11月27日に、神奈川県伊勢原市にある伊勢原団地12号棟改修工事の現場見学会に参加しました。本見学会は、神奈川県住宅供給公社と本学が2020年1月に締結した「団地利活用で地域創生を目指す連携協定」に基づき、伊勢原団地12号棟を学生が入居できる建物としてリノベーションし、地域コミュニティスペースも充実させることで周辺地域を含めた課題を解決するプロジェクトの一環で行われました。昨年秋には学生たちによるデザインコンペを行っており、それをもとに設計・施工が進められています。
伊勢原団地12号棟は地上4階建で、学生が入居するのは2人1部屋の29戸、1階はラウンジやキッチンといった共用部としてリノベーションされています。当日は、本プロジェクトを担当する神奈川県住宅供給公社賃貸事業部設計監理課の佐々木匠氏(工学部2012年度卒)や設計を担当した本学科の納谷新非常勤講師らの案内により、14名の学生が2班に分かれて居室や共用部を順番に見学しました。共用部では納谷非常勤講師より、「床をはがして現れた段差はそのままベンチにするなど、新築ではなくリノベーションだからこその挑戦的な空間がいいのではないかと考えました。玄関からそのまま土足で入れる土間のようなつくりで、建物の中に道が通ったイメージで設計しています」と説明がありました。居室内のラウンジ部分では、壁の角を丸くするなど圧迫感が出ないように工夫が凝らされ、シャワールームや洗濯機置き場を一カ所にまとめることで動線を確保しているといった説明もあり、学生たちは担当者らに熱心に質問していました。
引率した山﨑俊裕教授からは、「実際の工事現場を体験する機会はなかなかないので、授業では伝えきれないことも、五感を通じてたくさん学んでくれたのではないかと感じています。もともと学生がデザインした案は、予算の関係もあって採用されなかった部分もありますが、それも含めて勉強です。地域に根差した事業、地域に生きる建築として今後の連携を考えていきたい」とコメントがありました。昨年6月からプロジェクトに参加し、コンペで最優秀賞を受賞したグループの茂木涼介さん(大学院工学研究科2年)は、「入居者が楽しく暮らせることを考えてデザインしたので、自分が住んだらこうしたい、こんなことができたら面白そうと考えながら見学しました。設計が進むにつれ、団地ならではの厳しい条件があることを知り、授業だけではわからなかったことも学べました。全国的に団地の老朽化が進んでいると聞いているので、この取り組みが一つのモデルになればうれしい」と話しました。
公社の佐々木氏は、「学生たちが積極的に質問してくれて、見学会を開催してよかったと感じました。デザインについては学生の若い感性を生かした、私たちには思いつかない発想が多く新鮮でした。学生たちも予算や工期などリアリティを持って学べたのではないかと感じています。今後も地域活性化に向けて連携を深めていきたい」と語りました。