大学院工学研究科応用理化学専攻の中島理紗子さんが「第29回原子力工学国際会議」の学生ポスターコンペティションで「ベストポスター賞」を受賞しました

大学院工学研究科応用理化学専攻(原子力領域)修士2年次生の中島理紗子さん(指導教員=工学部機械工学科・堺公明教授)が8月8日から12日にかけて、中国・深圳を拠点にオンラインで実施された「第29回原子力工学国際会議(ICONE29)」(主催:米国機械学会、日本機械学会、中国原子力学会)の学生ポスターコンペティションに参加。「ベストポスター賞」を受賞しました。同会議は原子力工学に関して、研究者や技術者、学生がさまざまな観点から議論・情報交換して工学技術の発展を促すことを目的に1991年から開かれているもので、今年は、北米や欧州、中国、日本を含むアジア各国から計52件のポスターが提出され、遠隔により審査が行われました。

中島さんの研究テーマは「ナトリウム冷却高速炉における異常降雪事象に関する CMMC法を用いた定量的リスク評価」です。ナトリウム冷却高速炉と呼ばれる原子炉は最終的に空気の自然循環で熱を冷やすことが可能な仕組みで、竜巻や火山灰など上空からの災害による影響を受けやすいという側面を持っています。中島さんは近年、加速する地球温暖化の影響に伴い、短期間での異常降雪が増大傾向にある気象事情に注目。1万年に1度発生するとされる雪の量を計る指標「一万年再現期待値」を使用して、2050年までに異常降雪が160%増大する可能性があることを導き出しました。このデータを用いて異常降雪に対して、積雪が懸念される日本海側の原子力施設に及ぼす影響の大きさを解析し、原子炉が健全であるために設定されている制限温度を超過する確率が増大するというリスクを定量的に評価しました。

中島さんは、学部生時代から堺教授の研究室に所属し、本研究をはじめ原子力に関する研究活動に取り組んできました。同学会での発表に向けては、研究室に所属する留学生から英語の発音や言い回しなどのアドバイスを受けて本番へと臨み、「発表日の前日は緊張や不安で寝られませんでしたが、いざ発表の出番になると遠隔だったので、それほど緊張せず参加することができました」と振り返り、「他の発表者のポスターや内容もレベルが高く、まさか自分が賞をいただけると思っていなかったのでとても驚きました。受賞の連絡をいただいて、うれしさのあまり堺先生をはじめ、お世話になった方々にすぐに報告しました。来年4月からは原子力のリスク評価を行う企業への就職が決まっているので、大学で学んできた知識をいかしていきたい」と語っていました。

堺教授は、「私の研究室では、これまでも同会議には何度もポスターを投稿してきましたが、中島さんが初のベストポスター賞の受賞となります。各工程の計算結果が出るまでに時間を要する研究だったので大変だったと思いますが、学生の努力が評価されてうれしく思います。また、過去の気象データだけでなく将来の温暖化の状況を考慮した新しい視点も受賞につながったのではないでしょうか」と話していました。