講演会「健康格差の今―世界的視点から考える」を開催しました

健康学部健康マネジメント学科では、健康を多面的に捉えるために、学生が地域に訪れ、問題を発見し解決するにはどうしたらいいか考察し実践していく「フィールドワークA」の授業を開講しています。7月4日には全体指導として特別講演会を実施しました。当日は講師として日本ユニセフ協会学校事業部に勤務される高円宮承子さまをお招きし、「健康格差の今―世界的視点から考える」というテーマで講演がありました。承子さまは深刻な栄養不良を抱える国や地域の現状を報告した後、高栄養食品が子どもたちの命を守っている様子を具体例を通して訴えました。

講演では150以上の国と地域で行っている支援プログラムや貧困地域の子どもたちの現状などについてご紹介いただきました。承子さまは、はじめにユニセフの概要を説明し、5歳未満児の死亡率が高い国や1人当たりの国民所得が低い国、子どもの人口が多い国などが支援基準であると解説。会場の学生たちに「世界で一番子どもが多い国・地域はどこでしょう?」と質問を投げかけました。「人口が一番多いのは中国ですが、子どもに限るとインドが4億5000万人で最も多い。世界では、1年間に約560万人の子どもたちが5歳になる前に命を失っています。貧困地域の子どもは日常的に栄養が足りておらず、病院も遠いため、日本の子どもと同じ風邪にかかったとしても命を落としかねません」と語り、栄養治療食「プランピー・ナッツ」や粘膜を強くするビタミンAのカプセルなどを届ける支援活動の現状を紹介しました。

また、「世界では9億人もの人がトイレのない暮らしを送っており、ユニセフが設置しても “狭くて臭いから嫌だ”と使ってくれません。しかし、屋外排泄がいかに健康に被害をもたらすかを説明し、徐々に利用者が増えると、“子どもがお腹を壊さなくなった”“医療費がかからなくなった”と大人たちがその重要性に気づき始めます」と説明。

さらに、紛争後の地域やカースト制度の強い地域でコンフリクトを緩和する方法の一つとして、スポーツが有効な手段として活用されていることも紹介。東ティモールでは俳優のジャッキー・チェン氏を招いて武術体操を披露し、「武術は人を殺めるためではなく、人のために使う」ことを教えたといった活動や、ネパールで学校にサッカークラブを作りカースト差別が減った事例を示し、運動が世界の平和にも貢献できることを訴えました。「日本にいると何もできないと思ってしまうかもしれませんが、学生だからこそできることはたくさんあります。私は大学生のとき、目の前にあるチャンスを逃さないように何でも挑戦してきました。それがいま、いたるところで生きています。皆さんも間口を広げてたくさんのことにチャレンジしてください」と学生たちに向けてエールを送られました。

参加した学生は、「さまざまな問題について数字を示しながら説明してもらうことで、より具体的にとらえることができました。インターネットなどが普及し、情報は多くありますが、現地に行って生の声を聞くことが大切だと感じました。子どもたちの夢をかなえるためにできることを考えたい」と話しました。授業を担当する市川享子講師は、「健康学部では、栄養や運動、ソーシャルウェルネスやメンタルヘルス、ソリューションという5つの分野から多角的に“健康”を学んでいます。この講演会を通して、健康学部で学んでいることが、広い社会や世界でも役立つ可能性を有することを実感してほしいと考えました。フィールドワークの授業を通して、ローカルな問題解決とグローバルな視点を行き来しながら、考え行動できる学生を育てていきたい」と語っています。

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