シンポジウム「教育格差の広がりとポストコロナの教育」をオンラインで開催しました

健康学部健康マネジメント学科の市川享子講師が、10月30日にオンラインシンポジウム「教育格差の広がりとポストコロナの教育-誰ひとり取り残さないためのつながりを考える-」(共催:コンラート・アデナウアー財団、一般財団法人CSOネットワーク)を開催しました。このシンポジウムは、「誰一人取り残さない」ことを掲げたSDGsの達成を目指す取り組みが進む一方で、新型コロナウイルス感染症の広がりによって、教育格差がますます拡大している状況に対し、「公正な教育」「教師の能力開発」「ICTの活用」「新たなパートナーシップの構築」をテーマにポストコロナ社会について考えることを目的としています。

当日はまず、市川講師とコンラート・アデナウアー財団のクリスチャン・エッヒェル氏(アジア地域プログラム政治対話ディレクター)があいさつしました。市川講師はコロナ禍が長期化する中で学校行事の中止、不登校児童・生徒の増加など子どもの生活にも影響が出ていることを指摘。そのうえで、「格差社会において、どのようにすべての人々に質の高い、公正な教育が実現できるか、子どもにかかわる多様なステークホルダーがどのように取り組んでいけるかを考える場にしたい」と語りました。

基調講演では、東京都立大学人文社会学部教授の阿部彩氏(子ども・若者貧困研究センターセンター長)が「格差社会とコロナ禍の子どもたち」と題して講演。子どもたちが置かれている経済状況と教育格差の相関について説明し、スクールソーシャルワーカーの増配、教育の無償化、貸与型給付金の創設といった支援策とともに、少人数学級の導入や貧困家庭への生活支援等の包括的な政策の拡充が必要であると述べました。次に、澤田稔氏(上智大学総合人間科学部教授)が「社会的に公正な学校教育を構想する」をテーマに講演し、社会的に公正な学校教育の要素として、インクルージョン(包摂)、コンピテンシー(能力)、デモクラシー(民主主義)の3つを提示して教育での実践事例を紹介しました。続いて永瀬徹氏 (神奈川県立平塚農商高校教諭)は、「地域が学び場 地域の課題解決に挑戦 〜平農商高校マーケティング部の実戦から〜」と題し、コロナ禍で浮き彫りになった教育現場の課題を説明。続いて、平塚農商高校の生徒が、教育を受ける側の実感と併せて、コロナ禍で取り組んだイベント等の実践について報告しました。最後に、鈴木平氏(特定非営利活動法人TEDIC代表理事)が「子どもの包括的支援とその課題~宮城・石巻での実践から考える」と題して講演し、従来の取り組みでは取りこぼしてしまう子どもたちの「生きづらさ」について、官民一体となった包括的支援ネットワークを構築し、きめ細やかな連携のもと支援することの必要性を語りました。

基調講演の後にはセッションを実施。「教師の能力開発:SDGsのための教育とICTの活用」や「“公正な社会”を目指す教育の模索〜市民と地域の実践から〜」をテーマに、参加者同士がディスカッションし、考えを深めました。

また、シンポジウムに先駆けて28日には本学科の開講授業「フィールドワークB」の履修学生と市川研究室の学生が、横浜国立大学、神戸大学の学生らとともに「教育格差の広がりとポストコロナの教育」プレカンファレンスを開催。本学科の学生が英語での進行をしながら、SDGsの実現に重要なテーマである「格差」「ジェンダー」「地域」「環境」についての問題を提起。その後、学生が進行し、ドイツやブラジル、フィリピン、韓国等からの留学生を交えてディスカッションをしました。学生同士が国や地域を越えて、ポストコロナ社会での社会や教育のあり方について意見交換しました。グループディスカッションで発表した児玉あみさん(2年次生)は、共生とジェンダーについて英語を交えて話し、日本の現状と課題提起をおこないました。また、こうした取り組みに興味がある学生に対し、「一人ではなかなか一歩を踏み出せないなら、周りを巻き込んで、助け合いながら取り組んでみるとよいかもしれません」と話しました。