「生物イラストレーターが問う、動物展示の未来」を開催しました

教養学部人間環境学科自然環境課程では、「人間環境研究会~共生社会構築に向けた次世代の育成~第1回公開講座『生物イラストレーターが問う、動物展示の未来』」を5月19日に湘南キャンパス2号館で開催しました。海洋学部卒業生でイラストレーターの河合晴義氏を講師に招き、動物展示や生き物教育について学ぶことで、研究・教育活動の幅を広げることが目的です。本課程と大学院人間環境課程の学生、教職員のほか学内外から約80名が聴講しました。

昨年、世界動物園水族館協会が日本動物園水族館協会に対して野生イルカの入手を止めなければ除名すると通告するなど、世界中で自然保護意識が高まる中で、水族館や動物園の動物展示のあり方が問われています。河合氏は、「動物を自然のまま守ろうとする人たちと交流するうちに、動物の正しい姿を伝えるイラストレーターを目指すようになりました。イラストを見た人に動物に関心を持ってもらうためにはどうしたらいいか考えるうちに、”動物展示”にも興味が沸いてきた。そこで見えてきたのが、動物園や水族館は動物の大切さを伝えることを目的とする一方で、動物が減りつつある、消費し続けているという矛盾です」と話します。2009年には日本の水族館で飼われていたハンドウイルカ273頭のうち29頭が死亡し、11頭が繁殖したものの1年間生きたのは2頭のみ、1996年に118頭いたラッコは2015年にはわずか15頭にまで減ってしまったという例を挙げ、「日本は世界でも有数の動物園保有国にもかかわらず、動物の大切さを伝えられていないのでは?」と投げかけました。

河合氏は独学でイラストレーターになり、水族館や研究施設、図鑑などにイラストを提供しながら、3DのCGをプロジェクターで投影する動物展示システム「ライトアニマル」を開発。本物の動物「リアルアニマル」ではない、新しい動物展示の方法を確立し、世界でも高い評価を得ています。「CGならあらゆる動物を実物大で展示することができ、絶滅した種や深海生物など、本来であれば見ることのできない動物を紹介することもできます。病院やレストランなどどこでも展示が可能で資源も必要としませんし、何より動物に負荷がかからないのが一番の利点」と話します。「映像では触れることができない、リアルに感じることができないと思う人も多いと思いますが、この映像を見てもらえばわかります」と、ライトアニマルを展示している様子を上映。多くの子どもたちが投影された動物をなで、鳴き声に驚き、本物の動物に接しているようで、「ライトアニマルはCGですが、多くの人が感情移入をしています。これは、生き物の大切さを伝えることになるのではないでしょうか」と語り、その後、海外の水族館や環境保護イベントの様子も説明しました。河合氏は、「ライトアニマルのような代替動物展示の方法が発達しつつありますが、現在の動物園や水族館にもいいところはたくさんあります。この講義をきっかけに、動物展示のあり方を考えてみてください」と話しました。

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