黒田輝教授が国際磁気共鳴医学会のフェロー・オブ・ザ・ソサイエティに選ばれました

情報理工学部情報科学科の黒田輝教授がこのほど、国際磁気共鳴学会(ISMRM)のフェロー・オブ・ザ・ソサイエティに選ばれました。この学会は、全世界で7100名を超える会員を有する学術団体です。毎年1回、会員の中から学術的・教育的に顕著な功績をあげている人物に同賞が贈られています。

黒田教授は、水に含まれる水素原子核と強力な磁気の相互作用を利用して人体内を可視化する磁気共鳴画像化装置(MRI)を使って、体内の温度を非侵襲的に計測する技術の研究に長年にわたって携わってきました。研究では水の水素原子核から得られる磁気共鳴信号の周波数が、温度の変化に応じてわずかに(-0.01 ppm/oC)変化することに着目しました。このような現象が生体内の水に対しても起きることを示すとともに、この周波数の変化を分析することで、リアルタイムに近い形で体内の温度を正確に、かつ画像的に計測する技術を開発しました。この技術は臨床用の集束超音波治療装置に実装されるなど、レーザーや超音波による温熱治療を中心に、実際の医療分野での応用に貢献してきました。

現在は、本学医学部の松前光紀教授、今井裕教授、神戸大学工学部の熊本悦子教授、日本医科大学の高橋謙治准教授ら内外の研究者と協力しながら、水と脂肪が混在する乳房の温度計測技術、軟骨の温度計測技術、脳脊髄液の動態可視化技術、ならびに体内埋め込み型医療機器のMRI安全性の研究に取り組んでいます。

黒田教授は、「研究は一人でできるものではなく、先人たちの積み重ねや一緒に携わってきた多くの研究者・学生らとの共同で成り立っています。なかでも、松前先生を中心とする本学医学部の先生方、ボストンでの在外研究時代に指導を受けた押尾晃一先生(慶應義塾大学医学部)、石原康利先生(明治大学理工学部)をはじめとする元・東芝研究開発センターの皆様など、これまでともに研究してきた多くの方々に心から感謝しております。こうした評価を頂けたことは、同分野の研究を粘り強く続けてきた結果だと思っており、その姿勢はこれからも変わりません。これからもできる限りの想像力を働かせることを大切にしながら、誰も見たことのない体内の現象の可視化に挑んでいきます。また、大規模な医学部と工学部のキャンパスが近い場所にある東海大学の特徴を十分に生かして、日本では遅れている医学と工学の融合領域の増強にも力を尽くしていきたい」と話しています。

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