知のコスモス講演会「アジア・太平洋地域の平和と共生を考える(1)」を開催しました

文学部文明学科では6月25日にオンラインで、知のコスモス講演会「アジア・太平洋地域の平和と共生を考える(1)」を開催しました。アジア・太平洋地域で、政治の目の届かない人たちの支援を行う山口道孝氏(国際協力団体ANNIE FUND理事長/カトリック横浜司教区司祭)を講師に招き、支援活動の経験や平和の実現に向けた取り組みなどについて講演していただきました。

当日はオンライン会議システム「Zoom」を使用し、学生や教職員ら約30名が参加しました。はじめに山口氏は他国から日本に来た移民の歴史について紹介。約140万人の移民が発生する原因となったベトナム戦争ついて説明し、「戦時中にアメリカがまいた枯葉剤に含まれるダイオキシンの影響で、結合性双生児をはじめ体に不自由を抱えた子どもがたくさん生まれました。戦争終結後も後遺症に苦しむだけでなく、社会主義体制への移行や内戦が勃発したことで多くの難民が発生しました」と語りました。さらに、難民キャンプで出会った人々やそこでの体験を紹介するとともに、日本国内での難民受け入れ事情について、「日本への難民申請は年間1万4000人ほどありますが、50人前後しか受け入れられていません。また、受け入れても就労などの制度が整っておらず、日本の受け入れ態勢はまだ完璧とはいえません」と言及しました。

続いて、山口氏が交流してきた在日外国人とその生活について紹介。「日本には、かなり苦しい環境で暮らしている在日外国人の方がたくさんいます。中でも、見た目が日本人と同じ日系人は、外国人にも日本人にも受け入れてもらえないという傾向にあります。また、彼らは日本人がやらない過酷な仕事や深夜帯の仕事などで収入を得ていることが大半です。この現況を改善するためには一人ひとりがこの状況を理解することが重要です。他人事ではなく、主観的にこの問題を捉えてほしい」とメッセージを送りました。

学生からは「自分たちの生活が恵まれていると感じるとともに、しっかりと現状を理解した上で何かしらの形で支援していきたい」「講演を聞く前はこの問題を海外での問題だと捉えていたのですが、大学のある神奈川県や実家の近くにも移民の受け入れ場所や支援団体があり、身近な問題なのだと感じました」といった感想が聞かれました。