「2022年度東海大学史学会大会・総会・公開講演会」を開催しました

文学部では6月25日に、湘南校舎をメーン会場にオンラインも併用して「2022年度東海大学史学会大会・総会・公開講演会」を開催しました。本会では、本学における歴史学研究の発展に資することなどを目的に、毎年大学院生と教員による研究発表と各分野の専門家による公開講演会を開いており、当日は学生や教職員らが参加しました。

研究発表では、本学の教員と大学院生が成果を発表。三田武繁教授(本学部歴史学科日本史専攻)は、「後三年合戦と『後三年合戦絵巻』について」と題して、永保3年の後三年合戦で滅ぼされた清原武衡と清原家衡の関係について解説。編纂史料や軍記物語などの記述から、2人が兄弟である可能性が高いことを明らかにするとともに、叔父と甥としている通説の根拠『後三年合戦絵巻』の信憑性に問題があることを指摘しました。続いて、李暁闖さん(大学院文学研究科史学専攻博士課程2年次生)が、アジア・太平洋戦争後に中国国民政府が日本軍の戦犯を裁いた軍事法廷のうち瀋陽に設置された法廷について、新たに刊行された史料集成に基づいて内実を検証。さらに、白川美冬さん(同2年次生)が「埋葬施設に反映された信仰観-朝日遺跡を中心に-」と題して、愛知県の尾張地域の埋葬施設が向いている方向と周辺景観の関係について説明し、尾張地域で生きていた人々が、長い間継続して太陽への信仰心を持ち続けてきたことを明らかにしました。最後に、津澤真代非常勤講師(本学部)が、中世ヨーロッパの大学史を解説した後、イタリアのピサ大学を事例に、ルネサンス期のイタリアにおける大学と為政者、都市とのかかわりの実態を論じました。

公開講演では、信州大学人文学部教授の大串潤児氏が、「戦時戦後の大衆文化・紙芝居と演芸会-地域での担い手、民衆の欲望-」と題して、総力戦下の大衆文化として注目された紙芝居について解説。続いて、日中戦争に伴って始まった「国民精神総動員運動」のなかで、部落会などで紙芝居の実演が行われていたことを説明するとともに、「紙芝居の『どこでも』『いつでも』『だれでも』実践できる芸術様式が評価されて、娯楽から教化指導目的へと変化していきました。戦後は啓蒙的な紙芝居は縮小し、街頭紙芝居が復活していった」と紹介しました。さらに、戦時中の紙芝居は人々のどのような「意識」を受け止めて表現していたのかが今後の研究課題だと語りました。

庶務運営を担当した大谷哲講師(本学部歴史学科西洋史専攻)は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一昨年度は中止、昨年度はオンラインでの実施だったため、対面での開催は2年ぶりです。学内外教授や先輩方の講演を熱心に聞き、オンラインでは分からない緊張感を体感するなど、学生にとってよい刺激になったのではないかと思います。次年度は学生や地域の方々が集って、それぞれの学びをさらに発展させられるような機会にしていきたい」と話していました。