総合医学研究所の八幡教授らによる炎症長期化のメカニズムに関する論文が『Cell Death Discovery』に掲載されました

総合医学研究所の八幡崇教授(医学部医学科基礎医学系生体防御学領域)とアブドゥル アジズ ビン イブラヒム講師を中心とする研究グループは、東北大学大学院医学系研究科の宮田敏男教授(元・本研究所長)らとの共同研究により、炎症が長期化する新たなメカニズムを解明しました。本成果をまとめた論文は3月27日に、国際学術誌『Cell Death Discovery』オンライン版に掲載されました。

炎症は、細菌やウイルス、死亡細胞を除去し、傷ついた組織を修復するために必要な防御反応です。通常、免疫細胞「マクロファージ」が役目を終えた死亡細胞を食べて除去する機能(エフェロサイトーシス)によって炎症が収束します。しかし、この機能が正常に働かないと炎症が必要以上に長引き、がんや動脈硬化、自己免疫疾患といった多様な疾患の発症や悪化につながることが知られています。

本研究グループは、組織の修復やがん治療の効果を妨げるタンパク質「PAI-1」(パイワン)が炎症時に増加する点に着目。骨格筋を傷つけて炎症を起こしたモデルマウスを使い、PAI-1の働きを分析しました。その結果、炎症部位に集まる炎症性マクロファージがPAI-1を大量に産生しており、このPAI-1が、死亡細胞が出す「私を食べて」という合図(eat meシグナル)を妨害し、エフェロサイトーシスを妨げることを発見しました。さらに、本研究所が白血病や悪性黒色腫治療薬として開発に関わったPAI-1阻害剤「TM5614」をモデルマウスに投与するとエフェロサイトーシス機能が回復し、炎症が速やかに収束して筋組織の再生が促進されることも確認しました。

八幡教授は、「血液凝固や臓器の線維化(組織が固くなる症状)に関わる因子として知られてきたPAI-1が、炎症の長期化に関与する重要な因子であると示されました。この成果により、慢性炎症や組織修復障害に対するPAI-1を標的とした新たな治療法の開発につながる可能性があります」と意義を説明します。「一方、炎症は老化の大きな要因でもあります。我々は、PAI-1阻害剤『TM5614』の抗老化効果も明らかにしてきました。その成果は、健康寿命の延伸に関する研究コンペティションとして昨年実施された『XPRIZE Healthspan』で、600件を超える応募の中からセミファイナリスト(トップ40)に選出されるなど、世界的に注目されています。『TM5614』の効果はヒトを対象とした臨床研究でも確認しており、同コンペのファイナリスト(トップ10)選出も期待されています。今後も、多様な疾患の治療法開発や健康寿命延伸の基盤となる研究に尽力していきます」と話しています。

※『Cell Death Discovery』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://doi.org/10.1038/s41420-026-03076-0