
医学部医学科基礎医学系生体防御学領域の津川仁准教授(総合医学研究所)は、慶應義塾大学の研究者らとの共同研究により、腸内細菌「Klebsiella pneumoniae」(肺炎桿菌)が分泌する情報伝達達物質「菌体外小胞」が肝臓に移行して肝がんの発生・進展過程に関与するメカニズムを解明し、その成果をまとめた論文が3月26日に、国際学術誌『Journal of Extracellular Vesicles』に掲載されました。
近年、がんをはじめとする多様な全身性疾患の発症や進行に腸内細菌が関わっていることが明らかにされつつあり、疾患に関わる腸内細菌の特定やこれをターゲットとした新たな予防・治療法開発への期待が高まっています。津川准教授らは早くから、免疫力が低下した高齢者や入院患者で保菌率が上昇する「肺炎桿菌」に注目し、肺炎桿菌が高齢者において腸管粘膜バリアを突破し肝臓や肺へ伝播するメカニズムなどを解明し報告してきました。
今回の研究では、肺炎桿菌が放出する菌体外小胞(KpEVs)が宿主の年齢に関わらず腸管内から肝臓へ移行し、免疫細胞であるマクロファージの性質を改変させ、異物の排除機能を抑制することで易感染状態を引き起こすとともに、肝臓がんの発生や増殖を促す肝微小環境を形成することを解明。
さらに、KpEVsに含まれる「small RNA」(小分子RNA)が肝臓がん患者の体内で顕著に増加していることも確認しました。また、この小分子RNAがマクロファージによる病原体排除に必要な一酸化窒素の産生を阻害し、病原体の排除機能を低下させる仕組みも明らかにしました。
津川准教授は、「腸内細菌由来の細胞外小胞を介した腸肝ネットワークは、がんの発生や進展における多様性を理解する上で、きわめて重要な視点と捉えています。本研究は、肺炎桿菌がKpEVsの放出を介して肝臓がんを始めとする肝疾患と密に関連することを具体的に提示した成果だと考えています。KpEVsに内包される小分子RNAは血液からの検出が可能であり、肝臓がんや関連する肝疾患のリスクを評価する非侵襲的バイオマーカーとしての活用はもちろん、細菌が関与する発がんプロセスの指標としての応用も期待されます。さらに研究を進展させ、新たなアプローチによるがんの診断・治療法や予防法の開発につなげたい」と話しています。
※『Journal of Extracellular Vesicles』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://doi.org/10.1002/jev2.70262
※津川准教授が展開する研究の詳細は、下記URLからご覧いただけます。
https://sites.google.com/view/host-defense-mech-transkingdom/home