医学部付属病院が「高密度焦点式超音波療法を用いた前立腺癌標的局所療法」(先進医療B認定)に関するプレスセミナーを開催しました

医学部付属病院では5月19日に品川キャンパスで、今年2月に厚生労働省から「先進医療B」に認定された前立腺がんの最新治療法「高密度焦点式超音波療法を用いた前立腺癌標的局所療法」に関するプレスセミナーを開催しました。日本で初めて本治療法を導入した腎臓泌尿器科の小路直准教授(医学部医学科)が、講演と治療装置のデモンストレーションを実施。多くの報道関係者らが参加しました。

前立腺は、男性の尿道を取り囲むようにして膀胱の下部に位置し、排尿や性機能に影響を及ぼす臓器です。手術や放射線による従来の前立腺がん治療は、限局性がん(がんの分布が前立腺の一部分に限られ、転移のない場合)でも前立腺全体を対象とするため、排尿機能などが損なわれる場合がありました。最新の治療法は、直腸から超音波の照射と超音波画像の取得が同時にできる器具を挿入し、がんの部位を確認しながら病巣とその周辺のみに正確に強力な超音波を照射して壊死させるものです。がんの制御と機能温存を両立できる方法として注目されています。

小路准教授は、がんを高精度で診断できる「MRI‐TRUS融合画像ガイド下前立腺生検」により部位や形状、大きさを特定し、予後に影響する前立腺がんのうち、分布が限局的な患者に本治療が適用されることを説明。「正常な組織を可能な限り残せるので、排尿機能などを温存し、QOL(生活の質)を維持できる可能性が高まると考えられます。治療に要する時間は1時間程度と短く、2泊3日の入院ですむのも特長で、限局性前立腺がんの治療戦略の一つになると期待されます。今後は健康保険の適用に向けて、さまざまな施設の協力を得ながら310症例に対する5年間の経過観察を行い、有効性や低侵襲性をさらに明確にしていく計画です。前立腺がんは、60代以降に発症する人が多く、2017年に男性の部位別罹患数が第1位になるなど増加傾向にあります。高齢化が進む中、多くの方に“第二の人生”を楽しんでいただけるよう、低侵襲治療の発展を目指して努力を続けます」と語りました。

講演後には、実際に治療で使われる高密度焦点式超音波治療装置を用いて、がん組織モデルを焼灼・凝固して壊死させるデモンストレーションを実施。質疑応答では、参加者から多くの質問や治療に対する期待が寄せられました。