2020年度第2回健康・スポーツ科学セミナー」を開催しました

大学院体育学研究科では11月19日に、オンラインで「2020年度第2回健康・スポーツ科学セミナー」を開催しました。このセミナーは、学内外から健康やスポーツ科学の専門家を招くことで大学院生や教職員に知識の幅を広げてもらおうと、年に4回開いています。今年度は新型コロナウイルス感染症の拡大によりキャンパス内への入構を制限していることから、WEBビデオ会議システム「Zoom」を用いてオンラインで実施しています。今回は講師に東京都立大学客員教授の舛本直文氏を招き、大学院生、学生、教員ら約60名が参加しました。

舛本氏は初めに、近年開催されているオリンピック・パラリンピックの意義がオリンピズムの根本的な思想とずれている点があると指摘。過度な商業主義やヨーロッパ中心主義であることといった課題を例に、「本来の目的である世界平和や教育思想について、メディアではあまり取り上げられません。選手村や海外の選手による地域訪問といった異文化や多様性の理解につながる機会であること、オリンピック・パラリンピックの開催期間中は世界に休戦が呼びかけられていることなどに着目し、オリンピズムを再確認することが重要」と訴えました。また、来年夏に開催が予定されている東京2020大会について、大会の簡素化や感染対策経費の増加、ICT活用など、組織委員会で検討されている対策と、舛本氏が考える“ポストコロナ時代”のオリンピック・パラリンピックの私案を紹介。ギリシア・アテネでの恒久的開催と、それに伴う文化プログラム、施設建設費の節制案などを解説し、「“ウィズコロナ”“ポストコロナ”時代にオリンピック・パラリンピックを開催するためにどうすればいいのか、これを機に皆さんも考えてみてください」と参加者に向けて語りかけました。

講演後は参加者から、「ロス五輪以降、商業主義化していることについてどう思いますか?」「クーベルタンが提唱する『人格形成』は、選手だけでなく観客も含むのでしょうか」など多くの質問が寄せられ、意見を交わしました。最後に体育学研究科長の萩裕美子教授が講演への謝辞を述べ、「オリンピックの功罪や価値について、しっかりわかっていない大学院生も多かったのではないでしょうか。東京2020大会の開催が延期となったこれからの1年は、あらためてその価値を考える時間にするべきだと感じました。大学院生たちには、これから自分たちがどういう社会をつくっていくべきかを考えてみてもらいたい」と語りました。参加した吉田昴央さん(大学院体育学研究科2年次生)は、「多くの小中学校でオリンピック教育が行われているけれど、学生がオリンピックについて考える機会は少ない。今回の講演をきっかけに関心を持つ学生が増えることで、本来のオリンピック・パラリンピックの価値を取り戻すことにつながると思いました」と話しています。