サヘル・ローズ氏による公開セミナー「難民キャンプを訪れて」を開催しました

政治経済学部政治学科では7月13日に湘南校舎で、本学卒業生で俳優のサヘル・ローズ氏を招いた公開セミナー「難民キャンプを訪れて」を開催しました。今年度から開講している「グローバル・ガバナンス論」(担当=小川裕子教授)の一環で企画したものです。本授業では政府や国際機関、NGO、企業、専門家などのアクターが戦争、紛争、地球環境、貧困、難民といった地球規模の課題に挑む姿を知ることで、グローバル・ガバナンスの重要性や課題を理解することを目指しています。4、5月は小川教授が「新時代のグローバル・ガバナンス論」と題して講義し、6月からは自衛隊や世界銀行の職員、大学教員らさまざまなアクターが講義を担当。最終回となる今回はサヘル氏が講師を務め、オンラインでも配信し、本学科をはじめ経済学科、経営学科、国際学科などの学生や教員ら約100名が参加しました。

サヘル氏は、幼いころに戦争で家族を亡くし、7歳のときに養母に引き取られたといった生い立ちや、来日後に肌の色や体臭、話す言語、文化が異なることからいじめや差別にあった経験を語り、「人は違って当たり前と認め合えたらもっと生きやすい社会になると思います。相手を100点満点から減点していくのではなく、スタートを0点として、こうした考え方があるんだ、違う視点を持っているんだとプラス評価をしてみてはどうでしょうか。そうすることで、自分が持っていない視点や価値観を身に着けていけると思います」と話しました。また、「私たちは空気を読んで、相手に合わせる行動を無意識にとってしまいがちですが、99人がAと言っても、自分はBだと言える強い意志を持つことが大切。友達や家族のためではなく、自分のやりたいことを堂々と発信して、その道を歩いてほしい。努力をすればすべての夢がかなうわけではないけれど、失敗してもそれは経験となり、人生の糧となります。それができる環境にあるのだから、ぜひ失敗という成功を体験してほしい」と語りました。

その後は、2019年にシリアから逃れた子どもたちに会うためにヨルダンの難民キャンプを訪れたことに触れ、「家も家族も学校もあったのに、一夜の攻撃で無国籍となって生きていかなければいけない子どもたちがたくさんいます。周囲の大人は、シリアのアサド政権を支援したイラン出身の私に、“あなたが私たちを攻撃したわけではないけれど、出ていって”と言いました。国家のしたことを国民が背負わされるのです。政治や選挙を面倒くさいと思うのは簡単ですが、選挙権をごみ箱に捨てるのは未来を捨てるのと同じです」と熱弁。最後に、「何か行動したいと思ったときに、明日ではなく今日動くということを覚えて帰ってください。人生は長いように見えて、時間は足りません。明日は誰にでも来るとは限らないのです。悩んで、不安を抱えながら自問自答する中で道は見えてきます」と語りかけました。

講演後には質疑応答が行われ、学生からは、「これまで出会った中で100点満点と思える人はいますか?」「来日した当時と今の日本の印象の違いは?」「将来の夢が決まっていないのですが、なにかアドバイスをもらえますか」といった声が上がり、サヘル氏が一つひとつ回答。参加した学生は、「他人を100点から減点するのではなく、0点からプラス評価をするという話が印象的でした。育った環境が異なれば考え方が違うのは当たり前。自分の中になかったさまざまな話や考え方を聞くことができ、とても勉強になりました」といった声が聞かれました。