経済学科・髙橋涼太朗講師が執筆した論文が学術雑誌『Contemporary Japan』に掲載されました

政治経済学部経済学科の髙橋涼太朗講師が執筆した論文『The origins of income equality with a small government in Japan: An analysis of the formation of Japanese-style income policy in 1975』がこのほど、学術雑誌『Contemporary Japan』(https://www.tandfonline.com/toc/rcoj20)に掲載されました。

経済協力開発機構(OECD)諸国の中で日本は、1970年代から90年代にかけて政府の規模が小さいにもかかわらず、最も所得が平等な国の一つでした。本研究では、この「平等」で小さな政府がどのように形成されたのかを明らかにするために、75年の春闘の形成過程を分析し、人件費抑制を目的とした大蔵省の介入が重要であることを導き出しました。公務員の人件費は春闘の相場を踏まえた人事院勧告によって決定されますが、人事院は独立性が高く、大蔵省による介入が困難だったため、公務員給与決定のボトルネックである春闘への介入を企てました。具体的には、労働組合代表を直接説得することで賃上げ率を抑制し、総需要抑制政策をとった結果、労働組合は急激な賃上げ要求を控える一方、企業は雇用を維持し、賃金抑制に成功した政府は公共事業を拡大して雇用を創出しました。論文では、このような労働・企業・政府の関係が、「平等」で小さな政府の基礎となったことを明らかにしています。