「国際政治と科学技術」をテーマにゲストスピーカーを迎えて特別講義を行いました

政治経済学部政治学科の開講科目「国際機構論」で11月21日に、国際政治学の中でも安全保障を専門とする桜美林大学名誉教授の加藤朗氏をゲストスピーカーに招いた特別講義を行いました。加藤氏は本学平和戦略国際研究所で客員研究員を務めているだけでなく、本授業を担当する藤巻裕之教授の著書『グローバルシフトと新たな戦争の領域』(東海教育研究所)で執筆いただくなど長期にわたって交流があり、今回の講義につながりました。当日は本授業の履修学生だけでなく、国際学部国際学科開講科目「安全保障論」(担当教員:和田龍太准教授)を受講する学生も参加しました。

加藤氏は、はじめに昨年8月にウクライナ・キーウを訪れた際の惨状やこれまでの自身の活動について説明し、「アフガニスタン・カブールやフィリピン・ミンダナオ島、イスラエルなど多くの戦争・内戦の最前線に行ってきました。今回のウクライナでは、昨日通った場所にミサイルが着弾したというニュースや警報を耳にして、国家間戦争を肌で感じてきました。なぜこのような紛争が起きるのか考えていきましょう」と学生たちに問いかけました。続いて、国際紛争における情報の作用や紛争が起こる仕組みを解説し、「紛争は、主体、目的(意図)、手段(能力)がそろっている状態に、環境が加わることで成り立ちます。紛争は人間が考えることによって引き起こされるのです」と語りました。また、時代によって変容する紛争の形態は、現在は情報戦へと変化していると指摘し、通信工学と制御工学を融合した「サイバネティックス・システム」について触れ、「これからは生物体だけでなくAIも紛争の主体となる時代が訪れると考えられます。これまで仮想現実としてとらえられていたものが現実になる可能性が高まり、システムも人機融合が進む。私たちは人間とは何か、あらためて考える必要があり、紛争についても認識をあらためなくてはなりません」とまとめました。講義終了後には、学生から多くの質問が寄せられ、質疑応答が行われました。

また、同日に開講された藤巻教授が指導する大学院政治学研究科の授業でも、大学院生と加藤氏によるディスカッションを実施。院生からは、「政治体制は、ネオ・サイバネティクス・システムからどのような影響を受けるのか」、「ウクライナ戦争における精密兵器について」といったテーマが出され、加藤氏と活発な議論を展開しました。

藤巻教授は、「日々変化する国際社会を理解するためには、紛争の構造と科学技術の関係性を理解しなくてはなりません。学生だけでなく私たち教員にとっても学びのあるお話を聞くことができました。また、学生にとっては、現地に赴いて国際社会を理解しようとする加藤先生の姿勢は貴重な糧になったのではないでしょうか」と話しています。