【おしえてセンセイ! 06】宇宙って何でできているの?

A.実は、ほとんどわかっていません

理学部 物理学科 北林照幸先生

宇宙が何でできているのかは、私たち物理学者や天文学者でも、うまく答えることができません。というのも、わからないことだらけだからです。私たちの身の回りにあるものが原子でできていると学校で習ったと思います。ところが、仮に宇宙にあるすべての原子をかき集めても、宇宙全体の5%分くらいにしかならないのです。宇宙の残りの95%には、正体不明の見えない「ダークマター(暗黒物質)」と「ダークエネルギー」が広がっているのです。

ダークマターは宇宙の約26%を占めています。見えないのに、なぜそんなものがあると言えるのか? たとえば、渦巻き銀河の中心から外側へ向かって伸びる“腕”は回転しています。仮に銀河が原子だけでできていた場合、理論計算によれば内側よりも外側の腕の方がゆっくりと回転するという結果が出ます。ところが実際にはそうはなっていません。これは、原子以外の目に見えない大量の何かが重力源となって、回転を速めているからだと考えられています。この「目に見えない大量の何か」がダークマターです。

宇宙の約69%を占めるダークエネルギーは、宇宙を加速的に膨張させている正体不明のエネルギーです。宇宙にある物質の重力だけを考えれば、138億年前のビッグバンから始まった宇宙の膨張はどんどんゆっくりになるはずです。ところが実際はどんどん速く広がり続けています。「ダークエネルギー」の実体は謎のベールに包まれています。

宇宙の始まり自体も大きな謎です。アインシュタインの一般相対性理論で考えていくと、とても小さな領域に圧縮されていた宇宙の始まりは「無限大の温度」(特異点)になります。しかし、特異点で何が起きていたのかは、現在の物理学では理解することができません。光を使った望遠鏡では宇宙誕生から38万年後くらいまでしかさかのぼれず、それ以前の宇宙について知りたい場合は、電子や陽子などを高速でぶつける素粒子実験と理論物理学の出番になります。この実験によって、宇宙誕生から10⁻¹¹秒後の温度までは比較的良く再現できています。こうした実験結果を使って「現象論(フェノメノロジー)」の観点から初期の宇宙を類推するのも私の研究の一つです。

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現象論では、まず実験や観測の結果について「それはなぜだろう?」と考えます。次に「なぜ」の理由を説明できそうなアイデアをあの手この手で考えて、そのアイデアが正しいかどうかを、計算を重ねて確かめていきます。ときには、計算を始めて半年後に間違いが見つかることもあるのですが、ここで「がっかり」とはなりません。研究の世界では、失敗は成功につながる大切なプロセスなんです。

みなさんも、「なぜ」の答えがすぐ見つからなくても、諦めずに時間をかけて焦らずに考え続けてみてください。のんびり考える時間も、日々の勉強や好きなことにチャレンジし続けるための「土台」になってくれるはずです!


きたばやし・ てるゆき 1971年千葉県生まれ。東海大学理学部卒業後、東海大学大学院理学研究科修士課程修了。博士(理学)。三菱電機システムサービス(株)加速器技術センターなどを経て、2005年に東海大学理学部物理学科に講師として着任。2016年より教授。専門は、素粒子論・宇宙論。

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