化学科の荒井講師の研究グループによる論文が国際ジャーナル『Chemistry- An Asian Journal』にVery Important Paperとして掲載されました

理学部化学科の荒井堅太講師の研究室で研究・執筆した論文「Basic Amino Acid Conjugates of 1,2‐Diselenan‐4‐amine with Protein Disulfide Isomerase‐like Functions as a Manipulator of Protein Quality Control」が7月29日に、総合化学雑誌である『 Chemistry- An Asian Journal』のオンライン版に掲載されました。昨年度に大学院理学研究科化学専攻を修了した塚越俊介さんが筆頭著者となり、本学科4年次生の三神留美さんと荒井講師の3名で研究・執筆したもの。アミノ酸が多数連なったポリペプチド鎖が生理活性なタンパク質へと組織化する反応を補助する有機触媒の合成と応用方法についてまとめています。本研究はVIP(Very Important Paper)論文に選出され、今後発刊される紙媒体の表紙に関連図が掲載されます。

ポリペプチド鎖が体内で生理活性タンパク質となる際には、特定の立体構造を形成する工程が必要になります。この「フォールディング」と呼ばれる現象は試験管内での再現が難しいほか、体内でも失敗することが多く、構造成形不全のタンパク質が細胞内に沈殿・沈着することでアルツハイマー病などの神経変性疾患を引き起こすとされています。塚越さんらは、フォールディングにおける構造成形不全を防ぎ、生理活性タンパク質への組織化を促す有機触媒を合成。試験管内におけるタンパク質の人工合成の研究にも活用でき、医薬品開発への応用も期待される点などが高く評価されました。荒井講師は、「塚越さんは修士2年次生の1年間、就職活動と並行して日夜研究に取り組み、三神さんも4年次生ながら、触媒に毒性がないことを証明するなど大きく貢献しました。学生たちの努力により学会から高い評価を得て、表紙とVIP論文に選ばれたことはとても誇らしい」と話します。また、「今後はよりエビデンスを高め、学内外でタンパク質に関する研究をされている研究者や本学医学部との共同研究などに取り組んでいければ」と意気込んでいます。