SDGsへの取り組み紹介「生命現象への有機化学的アプローチ」

SDGsってなんだろう?

現在、人類は貧困、紛争、気候変動、感染症などこれまでになかったような数多くの課題を抱えているため、現在の生活の安定的な暮らしを維持できなくなると言う心配が生じています。そんな危機感から、世界中のさまざまな立場の人々が話し合い、課題を整理し、解決方法を考え、2030年までに達成すべき具体的な目標を立てました。それが「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」です。ここで定義される持続可能とは、何かをし続けることができるということであり、17の目標と169のゴールを掲げています。

化学科・化学専攻におけるSDGsへの取り組み

化学は物質の構造、性質、変化(化学反応)を理解する学問です。したがって、化学科では物質がかかわるあらゆるものを、実験を通して解明することで医療、環境、エネルギーなどの分野における持続可能な開発に貢献します。

私たちの研究で解明したいこと

グルタチオン(GSH)は、グルタミン酸、システイン、グリシンといったアミノ酸からなる水溶性ペプチドであり、細胞内に豊富に存在し、フリーラジカルや過酸化物などの活性酸素種の分解やタンパク質中のジスルフィド結合の切断など、重要な役割を果たしています。一方、セレンは生体内の必須微量元素であり、セレン原子は高い求核性と低い酸化還元電位を示すので、グルタチオンを構成するシステインの代わりにセレノシステインをもつ還元型セレノグルタチオン(GSeH)は、グルタチオンよりも高い生理活性を示すと考えられ、基礎生物学分野や医学分野への応用が期待されています。
また、細胞内の遊離銅イオン濃度が閾値を超えると、活性酸素が増加し深刻な毒性を示すことが知られ、その一例としてウィルキンソン病などがあります。異常に蓄積した銅イオンは、ペプチドやタンパク質とキレートを形成することで細胞外へと運搬・除去されます。グルタチオン(GSH)は代表的な銅イオンの生体内キレート剤です。私たちは、グルタチオン(GSH)よりも高い生理活性を示すと考えられる
セレノグルタチオンを用いることによって、生体内における銅イオンとセレン化合物の相互作用を明らかにしたいです。

この研究が関わるSDGs

この研究は17の目標の内、3番に示される、「すべての人に健康と福祉を」の達成に貢献します。上記に示しましたように私たちの取り組みは、生体内におけるいまだ解明できていないことについて、より追跡をしやすいセレン化合物を使って解き明かし、医薬品への応用を目指しています。
そのために、セレノグルタチオンと銅イオンとの相互作用についてをNMRや単結晶X線などを用い様々な角度から評価を行っていきます。