2016年4月に発生した熊本地震で甚大な被害を受けた旧阿蘇キャンパス(現:阿蘇実習フィールド)の1号館と地面に表出した断層が熊本県の「震災ミュージアム」として整備され、8月1日に公開されました。熊本地震は震度7の揺れが28時間に2度発生するという歴史上類を見ない大規模災害で、272名が亡くなり、20万棟近くの家屋被害が生じています(2020年3月時点)。本学農学部が設置されていた阿蘇キャンパスも1号館をはじめ、多くの建物が損壊。近隣のアパートで暮らしていた学生3名の尊い命も失われました。熊本県では地震の経験や教訓を学び、風化されることなく後世に伝承するとともに、今後の大規模自然災害に向けた防災対応の強化を図ることなどを目的に、県内各地に点在する震災遺構等を巡る回廊形式のフィールドミュージアム「熊本地震 記憶の回廊」の整備を推進。この一環で、1号館の建物と地表に現れた断層も地震をテーマとした体験・体感型の展示・学習施設として整備されました。
1号館には事務部署の各部屋をはじめ、教室や図書館、コンビニエンスストアなどがあり、学生たちのキャンパスライフの中心といえる建物でした。地震を引き起こした断層の上に建っているため、耐震補強工事の入っていなかった部分を中心に大きく損壊しましたが、今回の整備でY字型校舎の各翼を切り離すとともに倒壊を防ぐ補強工事を実施。安全確保のため建物内には立ち入れませんが、周辺を通路で囲み、大きくとられたガラス窓から特に被害の大きかった阿蘇事務課の部屋の状況を見学できるようになっています。また、建物の裏庭に表出した断層も風雨で崩れることのないよう樹脂で固めるとともに屋根が取り付けられ、地震の規模の大きさを目で確かめられます。各所には地震の規模や被害状況を説明するサインボードも設置されています。今回はこの2カ所の公開となりましたが、今後は隣接するグラウンド部分に駐車場と展示室、防災やレクリエーションに活用できる広場なども設けられる計画です。
地震発生当時に農学部長を務めていた荒木朋洋九州キャンパス長は、「旧1号館は熊本地震によって多大な被害を受けましたが、表出した断層とともに、多くの専門家の方々から”学術的に意義が大きく、記録として残すべき”という意見が寄せられており、大学として県の構想に協力することで後世に残せることになりました。震災の形をそのまま見ることのできる施設になっており、県内外の方々に防災教育の場として活用していただけるのではないでしょうか。また、多くの人たちがこの地を訪れることで、地元の南阿蘇村黒川地区の復興にも寄与できます。農学部を中心とした学生たちもこの黒川地区で地震の記憶を語り継ぐ『語り部』の活動を続けているほか、教員による地域の特産品づくりなども展開しており、今後もさまざまな形で復興に協力していきたいと考えています」と話しています。
熊本地震震災ミュージアム「記憶の回廊」 旧東海大学阿蘇校舎1号館・地表地震断層
【公開時間】 9:00~17:00(冬季は16:00まで)
【入場料】 無料
【休館日】 毎週火曜日、年末年始
【住所】 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽5435
※黒川地区側(旧阿蘇大橋崩落現場付近)からは入れず、阿蘇ファームランド横の道路からのみ入場可能
※団体での見学は、事前に公式HP(https://kumamotojishin-museum.com/)から「見学申込書」の提出が必要