地域デザイン学会北海道地域部会第6回研究会で札幌キャンパスの教員が研究報告しました

札幌キャンパスの国際文化学部と生物学部の教員が、2月4日にオンラインで開かれた一般社団法人地域デザイン学会北海道地域部会第6回研究会に参加。「北海道ニセコリゾートの発展の系譜と現在」のテーマに沿って研究成果を発表しました。国際文化学部の平木隆之学部長が部会長を務める北海道地域部会の研究会は、本学北海道地域研究センターが共催し、本学が後援して開かれたものです。当日は、同学会に所属する多数の研究者や本学教職員が参加しました。

地域デザイン学会理事の成川忠之教授(経営学部)が司会進行を務めた当日は、まず平木学部長が本会のテーマの意義を説明。「地域デザイン学会が掲げる『地域に見出されるローカルな価値をグローバルな価値にまで高めていく』モットーに基づき、今回は、国際リゾート地としてユニークな機能を担い、国際的なレベルにまで高揚してきたニセコリゾートをテーマに設定しました。実践的な経験を有する皆さんから示唆的なお話をいただけると期待しています」と語りました。続いて、本学の山田清志学長があいさつし、「私自身、生まれて高校卒業まで北海道で育ったことから、往時のニセコを知るものとして現在のニセコの姿には隔世の感があります。ニセコはご案内の通り、外国人にとって入りやすい日本国内の地域となっています。本研究会では、その地域のデザインを国際的な視点でご議論いただければ」と期待を寄せました。

イントロダクションとして、地域デザイン学会の原田保理事長が「地域デザインのコンテクスト転換」と題し、政府による地方創生の概要と課題、デジタル田園都市国家デザイン構想への期待、北海道地域部会と本キャンパスに設置されている北海道地域研究センターを中心としたフォーラム設置への思いなどを語りました。続く講演では、本学スチューデントアチーブメントセンターの礪波清一教授が「ニセコリゾート開発の系譜」をテーマに、東急グループでリゾート開発に携わった経験からその意義や将来像を解説。さらに、元倶知安町長の西江栄二氏が「ニセコリゾート開発による行政需要」として、行政面から見たニセコ周辺地域の現況と課題を指摘しました。

後半の研究報告ではまず、国際文化学部の相原博之教授(スキー部監督)が登壇し、「2030札幌オリンピック、パラリンピック誘致活動における、ニセコスキー場の役割について」をテーマに、スキー・アルペン競技の一つであるスピード系種目のダウンヒルとスーパー大回転の競技会場としてのニセコスキー場の価値を解説。「現在、誘致に向けた活動が進んでいる札幌五輪が開催される場合、ダウンヒルとスーパー大回転の競技ができるのは、規定を満たす標高を持ち、世界一の雪質であるニセコしかありません。自然雪を使った競技が可能であり、環境も素晴らしい。IOCが提案する既存の競技施設を使用し、お金をかけない五輪の開催が可能です」とまとめました。

また、国際文化学部の谷本一志講師は農業経済学が専門の立場から「ニセコにみる地域振興と森林・土地問題」と題し、ニセコ町や俱知安町の人口増加と地価高騰の現状、北海道新幹線開通に向けた再開発と観光地の誘客プランの現状を説明したうえで、羊蹄山・ニセコアンヌプリのブランド棄損や、リゾートを巡るニーズの変化やオーバーツーリズムへの懸念、乱開発、海外からの不動産投資・資産保有といった問題を指摘しました。生物学部の櫻井泉教授(北海道地域研究センター次長)は、「北海道寿都町と東海大学の地域連携」として、臨界実験場と寿都町、留萌市、豊浦町で展開している地域連携による研究・開発の現状を紹介。「本センターでは、東海大学の掲げる文理融合の理念を生かしつつ、地域の自然や社会にかかる学際的、先端的研究を展開し地域経済の発展と地域活性化の担い手育成を図っています。今後は、地域デザイン学会とも連携を図っていきたい」と語りました。

成川教授による総括に続く閉会あいさつでは、網野真一札幌キャンパス長が関係者への謝辞を述べるとともに、「本キャンパスでは臨海実験場を核として北海道地域研究センターを立ち上げましたが、これから本格的な活動を展開していく研究組織であり、その役割として地域貢献活動にも携わっていきたいと考えています。本研究会では、各分野の専門家の皆さんの講演と報告から、地域振興における各ステップのキーパーソンの必要性や、デジタル田園都市国家構想における地域性への配慮や人材育成の重要性などを再認識する機会となりました」とまとめました。