九州キャンパスでは、熊本県企画振興部地域振興課と連携した震災復興企画「ありがとうプロジェクト」を実施しました。2016年に発生した熊本地震では、本学阿蘇実習フィールド(旧・阿蘇キャンパス)が甚大な被害を受けましたが、4年を経た現在ではフィールド内の圃場で新鮮な農産物が収穫できるまで復興しています。今回の取り組みは、震災からの復興を広くPRするとともに、暖かいご支援をいただいてきた実習フィールド周辺の黒川地区の皆さまや、熊本県民の方々との交流を深め感謝を伝える機会にすること、さらに復興の輪を広げるため、今年7月に発生した熊本県南豪雨における被災地の方々の支援につなげることを目的としています。
プロジェクトには、本キャンパスの教職員とともに、欅祭(建学祭)実行委員会農産部会に所属する学生有志が参加。最初の活動として11月12日に阿蘇実習フィールドで、農産物の収穫と地元住民への譲渡の会を開きました。この活動は、本学が環境省や熊本県と結んでいる協定に基づいて活動している「南阿蘇村黒川地区創造的復興プロジェクト」の一環で、本フィールド周辺の地域住民の皆さんと学生、荒木朋洋九州キャンパス長をはじめとした教職員がともにハクサイやサツマイモ、サトイモなどを収穫。作業を通じて交流を深めました。
翌13日には熊本県庁敷地内特設ブースで、熊本地震復興へのお礼と豪雨災害への支援を訴える募金活動を展開。寄付を寄せていただいた方々には、前日に実習フィールドで収穫した農産物を配布しました。初めに農学部の岡本智伸学部長が熊本県のPRマスコットキャラクターのくまモンとともに、熊本地震における本学農学部が受けた被害や復興への道のり、学生たちの活動などについて紹介。その後、教職員と学生が「復興支援ありがとうございました! 県南豪雨へのご支援をお願いします」と声を出して募金を呼びかけました。農産担当代表の杉村希さん(農学部応用植物科学科3年次生)は、「私自身も豪雨災害のあった県南部の出身で、友人には大きな被害にあった人もいたこともあり、故郷のために少しでも貢献できればという思いでした。新型コロナウイルス感染症の拡大で欅祭が中止となる中、熊本県庁の皆さんのご協力で阿蘇で私たちが育ててきた野菜を活用してもらえる機会ができてうれしい」と話していました。
また、13日の活動がきっかけとなり、29日にはサッカー・J3リーグのロアッソ熊本のホームゲーム会場である、えがお健康スタジアムで開かれた「『ロアッソ熊本をJ1へ』県民運動推進本部ホームゲーム地域物産展」に参加しました。県庁内で募金を呼び掛ける本学教職員と学生を見かけたチーム関係者から、出展を呼びかけられて実現したものです。事前に実習フィールドで収穫した野菜200点を準備し、当日は教職員と学生が被災地支援を呼びかけながら販売。開始から1時間半ほどで完売する盛況ぶりでした。この日の売り上げはすべてロアッソ熊本を運営する株式会社アスリートクラブ熊本を通じて、県南豪雨の被災地に送られます。参加した男武瑠奈さん(同)と内田葵さん(同)は、「3日間の活動を通じて、人の温かさや優しさを感じました。私たちが育てて、今回の企画でお配りしたり販売したりした野菜は、お店で売られているものではないのに、信頼して義援金を出してくださる方ばかりで本当にうれしかった」と充実した表情を見せていました。
学生とともに協力を呼び掛けた岡本学部長は、「本学部が熊本地震で大きな被害を受けた際には、県内外から多大な支援をいただきました。今回参加した学生たちはその時はまだ入学していませんでしたが、先輩たちの思いを受け継ぎ、世代を超えて恩返しをしてくれました。自然災害からの復興には『共助』が大切ですが、これは無理をすることなく、それぞれの得意分野で実行していくことが重要です。今回のプロジェクトは、農学部が得意とする農作物生産を通じて社会に貢献し、共助につなげる機会になりました」と話しています。