北欧学科が知のコスモス講演会「イプセン作『ヘッダ・ガーブレル』を読む」を開催しました

文化社会学部北欧学科では5月25日にオンラインで、知のコスモス講演会「イプセン作『ヘッダ・ガーブレル』を読む」を開催しました。2010年に新国立劇場で新訳上演された『ヘッダ・ガーブレル』の日本語訳を手掛けた演劇研究家・翻訳家のアンネ・ランデ・ペータス氏を講師に招き、ノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの生涯や作品の魅力、それを翻訳・上演するにあたって直面した問題についてお話しいただきました。

当日はWEBビデオ会議システム「Zoom」を使い、学生・教職員を中心に一般参加も含め約90名が参加しました。はじめに、ペータス氏は『ヘッダ・ガーブレル』から抜粋したシーンのセリフを読み、その場面を動画で紹介。イプセンが「近代演劇の父」と称されるゆえんやその生涯について語り、「イプセンは近代演劇の創始者であり、当時のノルウェーの社会状況や社会問題の数々をテーマとして扱いました。作品にはさまざまなメッセージが散りばめられており、『ヘッダ・ガーブレル』の主人公・ヘッダは、思想やしきたりに縛られるブルジョワ社会で生きる人間のすべてを表現しています。それらのメッセージは現代社会にも通じるものがあり、イプセンの作品は今も全世界で愛されています」と語りました。

講演後にはチャット機能で質疑応答も行い、「ノルウェーと日本の文化・価値観の違いを感じました。翻訳する際に注意していることはありますか?」という質問に対し、ペータス氏は「翻訳にはさまざまな訳し方があり、そのまま訳してしまうと受け手が違和感を抱くことがあります。ニュアンスや意味合い、物語の展開・つながりなどさまざまな要素から考えを巡らせなければなりません。私が翻訳する際には、国によって異なる独自の文化や美意識、受け取り方も頭に入れながら、正しい意味で伝わるように意識しています」と回答。参加者からは感想も多数寄せられ、「いじめや疎外感など、この作品が現代の社会問題にも通じていることに驚いた」「翻訳された際の工夫などを聞くことができて参考になった」といった声が聞かれました。