文化社会学部主催「知のコスモス」講演会「ピラミッドの時代」を開催しました

文化社会学部では1月25日に湘南校舎を拠点にオンラインで、「知のコスモス」講演会「ピラミッドの時代」を開催しました。古代エジプトの古王国時代(紀元前2592年~2120年頃)は、ピラミッドの建造をはじめ、王権の確立や太陽信仰の台頭、官僚機関の複雑化といった特徴ある時代として知られています。古王国時代の研究は碑文やパピルス文書の解読、住居址の発掘や発掘された資料の分析といった伝統的な研究方法だけではなく、ピラミッド内外の形状データを取得する最新の計測調査など多岐にわたっています。今回の講演会は、テレビ番組やYouTubeなどで活躍する河江肖剰氏(名古屋大学国際高等研究機構高等研究院准教授)が、最新の研究で明らかになったピラミッド時代について語りました。

河江氏はまず、「考古学は遺物を発見する作業をメインだと考える人が多いと思いますが、もっとも大事なのは記録です。記録を残す作業は手で行われてきましたが、現在は物理学や洞窟探検家など、さまざまな分野の専門家らと協力し、最新の機器を使って調査を進めています」と語り、さまざまなピラミッドの構造や出土した遺物を紹介しました。また、近年発掘された港湾遺跡と古代エジプト語文書の発見からピラミッドの石材供給地と消費地の関係、ピラミッド建設にかかわる人たちの動き、そしてこの時代の経済活動など、「今まで知られていなかったエジプトの姿が見えてきています」と話しました。

質疑応答では、「最近の調査研究でもっとも興味深かった成果は?」「ピラミッドが造られた時代にはどのような産業があったと考えられますか?」といったさまざまな質問が寄せられました。「河江先生のYouTube配信動画でピラミッドの魅力を知りました。ピラミッドの全貌はいつ分かりますか?」という質問に、河江氏は、「私たちの仕事は謎を解明するのではなく、謎を見つけることにあります。“謎”つまり、研究課題を明確に設定すると、またそこから謎が広がっていきます。謎を見つけ、それを育てるのが我々の仕事だと思います。そういう意味で、ピラミッドについていろいろなことがわかってきていると同時に謎は年々深まっているともいえます。全貌は今後も見えないといっても過言ではないかもしれませんね」と笑顔で回答していました。