A.高温作動やフル充電、落下をできるだけ避けましょう
工学部 応用化学科 松前 義治 先生

電池作動時には絶えず内部で化学反応が起きており、充電した電池にはエネルギーがたくさん詰まった状態になっています(高エネルギーな化学物質が生成しています)。科学の世界では「高エネルギー」と「不安定」はほぼ同じ意味で使われます。すなわち、充電した電池の中の状態は科学的に非常に不安定で、熱や衝撃に弱いのです。またこういった性質は、実は近年急増している発火事故にも大きく関係しているのです。
スマホやモバイルバッテリーに使われているリチウムイオン電池の中には+極と-極があり、電解液を介してリチウムイオンが両極の間を行き来する化学反応で、充放電しています。電池の高温作動は、本来電池の中では起こるべきではない化学反応(副反応)を引き起こす可能性も高めます。多くの化学反応は温度が高くなるほど起こりやすくなり、反応速度も上がるからです。副反応によってガスや熱が発生すると、電池の寿命を急速に縮めてしまいます。副反応はフル充電(高エネルギー状態=最も不安定な状態)でも起こりやすくなるので、電池の寿命を考えるなら、高温およびフル充電状態を長く維持することや、過剰に充電することは避けるべきでしょう。また副反応によって生成したガスは、発火の原因になります。
リチウムイオン電池の+極と-極はプラスチック製の膜によって隔てられています。しかしこの膜が、高温で溶けたり、落下の衝撃などによって破れたりしてしまうと、過剰な化学反応によって熱やガスが発生し、燃えやすい性質を持つ電解液やガスが燃えて、発火してしまうのです。つまり、電池の安全性や長期利用を考えるなら、高温やフル充電を避けることの他に、落下などの衝撃を与えないことも重要になります。
実は、リチウムイオン電池は理論的にはとても高度な技術が詰まった電池なんです。電極に使われる材料と電解液とは化学反応を起こしやすいため、長い間、安定して使うことが困難でした。実用化への道を切り開いたのが、ノーベル化学賞受賞者である吉野彰博士です。博士は電池に使われる素材の組み合わせを工夫することで、リチウムイオン電池の原型を生み出したんです。
そんなリチウムイオン電池に比べ、理論上は約10倍もの容量が実現可能とされているのが、私が研究しているリチウム硫黄電池です。リチウムイオン電池の+極に使われていてレアメタルの一種でもあるコバルトに比べて、硫黄は資源的に豊富かつ軽い元素なので、低価格化や軽量化も期待できます。しかし、硫黄が化学反応を起こしたときに膨張することで電極が壊れてしまう恐れがあるなど、実用化までにはまだまだわからないことや課題が山積みです。そこが、研究のやりがいでもあるんですけどね。
わからなかったことがわかるようになるって、すごく楽しいことだと思います。試しにみなさんも、好奇心のままに、「知りたい」と思ったことはわかるまで調べてみてください。それを繰り返していくと、主体的に考える姿勢が自ずと身につき、難題にぶつかっても応用が利くようになるし、何といっても面白い! 「知りたい」という好奇心は、人生をきっと豊かにしてくれるはずです。
まつまえ・ よしはる 1986年東京都生まれ。東北大学工学部卒業後、東北大学大学院環境科学研究科博士課程修了。博士(学術)。横浜国立大学特任助教などを経て、2018年に東海大学工学部応用化学科に着任(現職)。専門は電気化学・分析化学など。
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