工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻がJAXAの専門家による特別講義を行いました

工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻では5月29日、主に1年次生を対象とした授業「入門ゼミナール」で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の船木一孝氏による特別講義を実施しました。講義には約90名の学生が出席し、人工衛星や宇宙探査機などに使われる電気推進技術の研究開発に携わってきた経験が語られました。

「深宇宙航行のための宇宙機推進技術」と題した講義では、JAXAがこれまでに展開してきた地球の大気圏よりも外側の宇宙空間を指す「深宇宙」の探査について紹介。ハレー彗星や月、金星、火星などを対象とした観測、探査ミッションの数々について、その概要が語られました。その後、推進機の開発担当として携わった小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトを説明。はやぶさに課せられた小惑星「イトカワ」から欠片を持ち帰るサンプルリターンミッションという役割の全体像から、本体には主となる推進機である「イオンエンジン」4基のほかに、「姿勢制御スラスタ」が計12基取り付けられていたことなど、特に推進技術に関する細部について詳しく解説しました。「たとえ1つのスラスタが故障しても、すべての系統が沈黙しないように設計されており、イオンエンジンが万一故障しても、活動が維持できるように工夫されていました。『フェイルセーフ(fail safe)』の概念は、宇宙機だけでなく、自動車や飛行機などにも取り入れられています。『はやぶさの奇跡』と評されたミッション成功の裏にはトラブルを乗り越えるための数々の工夫があったこと」を知ってほしいと語りました。

最後に船木氏は「はやぶさ2」ミッションをはじめ、JAXAが現在取り組んでいる宇宙研究について紹介。「イオンエンジンなどの電気推進技術に加え、太陽エネルギーを推進力とする『ソーラーセイル』、大気を宇宙機の減速に利用する『エアロキャプチャー』といった次世代技術の大型化、効率化、信頼性の向上が進めば、次のステップとして有人探査が視野に入ってくる」と夢を語りました。講義後はそれら新技術に学生からの質問が集中。船木氏は「私もまだまだチャレンジを続けます。興味のある皆さん、ぜひ一緒にチャレンジしましょう」と呼び掛けました。

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