砂見准教授が日本設計工学会の2020年度「The Most Interesting Reading賞」に選ばれました

工学部機械工学科の砂見雄太准教授が執筆した記事「ウェブハンドリング技術とその将来展望」が、5月21日にオンラインで開催された「2021年度日本設計工学会通常総会」で20年度「The Most Interesting Reading賞」に選ばれました。同賞は設計工学の分野における研究や教育ならびに設計開発の成果をわかりやすく伝えることなどを目的に1996年度に制定され、前年1月から12月末までに同学会誌『設計工学』に掲載された論文以外の記事のうち、読者である一般会員の投票結果をもとに内容が最も興味深いと認められる著者に贈られています。

砂見准教授は、ロール状のフィルムを繰出し、印刷やコーティングなどの加工を施した後に再びロール状に巻き取ることで、紙や繊維、プラスチックフィルムなどの比較的薄く柔軟な素材(ウェブ)の大量生産を可能とした「ウェブハンドリング技術(ロール・ツー・ロール)」について、その歴史を交えながら解説。新聞紙やトイレットペーパーなど身の回りで目にするものに多く用いられ、この技術にかかわる企業や技術者は日本に数多く存在している一方で、専門家が少なく現場での経験と勘を頼りにウェブ製品が製造されているといった現状も説明しました。また、製造工程において、折れやしわが品質に深刻なダメージを与え、これに伴う経済損失は極めて大きいためことにも触れ、その解決策として「折れやしわの理論モデルを構築し、ウェブの搬送速度、張力、ローラ間のミスアライメントなどの条件を入力することで、どのような状況において折れしわが生じるか予測することが可能になっている」と紹介。今後の展望として、「電子デバイスを印刷によって製造する『プリンティッド・エレクトロニクス(PE)技術』と融合した『ロール・ツー・ロールPE』がモノづくりの主流の座を占めていくことが予想される」とし、低コストで環境にやさしい製造法にシフトしていく一方、「素材がますます薄膜化していく中で不具合を完全に防止する必要がある。(中略)これまでに培ってきたウェブハンドリング技術の一層の高度化が今後の課題」と指摘しました。

砂見准教授は、「解説記事による受賞は初めてのことで、多くの方が興味を持って楽しく読んでくれた証として大変うれしく思います。長年、この研究に携わってきた橋本巨名誉教授から“論文と解説は違う”と教えられてきたので、専門家以外でも読みやすい文章を心がけました」とコメント。このほど大学発ベンチャーとして「株式会社SUNAMI」を設立し、製品を巻き取る際に発生しやすいしわや歪みなどを予測するシミュレーションソフトの販売なども手がける予定で、「企業とも共同開発を活発に進め、さらに研究を深めていきたい。また、学術面でも成果を出したい」と話しています。