東海大学では10月2日にオンラインで、建築都市学部オープニングセミナー「建築と都市を切る/つなぐ」を開催しました。2022年度に開設する建築都市学部の理念や教育・研究活動を周知するとともに、建築にまつわる企業や行政、大学などの研究機関の識者らとそのあり方を考える機会とすることを目的としたものです。「Linkage 人・建築・都市を○○でつなぐ」を共通テーマとして今年度から23年度まで合計9回の講演を企画しており、第1回目となる今回は株式会社日建設計のチーフデザインオフィサーで常務執行役員の山梨知彦氏が講師を務めました。
はじめに建築都市学部学部長就任予定の岩崎克也教授(工学部建築学科)が、「本セミナーは建築のデザインだけでなく、構造や設備、まちづくり、照明、ランドスケープなど、建築の世界、建築の都市で活躍する9名のトップランナーをお招きしてこれらの世界の広がりと面白さを伝えていきたいと考えています」とあいさつしました。続いて登壇した山梨氏は、自身が主に大型建築を手がけていることなどに触れ、「内外のつながりがなく、世界中に同じような建物が増えているから大型建築は嫌われてしまうのではないかと感じています。障子や縁側、引き戸のようなものを用い、伝統的な建築に近い、内外をつなげる工夫を取り入れることで、人々になじみのある建築になるのでは」と提言。自身の設計チームをつくって最初にデザインした東京木材問屋協同組合の「木材会館」をはじめ、建築学会作品賞を受賞した「NBF大崎ビル(ソニーシティ大崎)」「桐朋学園大学調布キャンパス1号館」、日本建築大賞に輝いた「ホキ美術館」など数々の業績を紹介しながら、アメリカ同時多発テロや東日本大震災をきっかけにより安全なビルの建築にこだわるようになった一方で、クライアントの意向や環境を生かした使いやすいデザインにこだわり、バルコニーやガラスの壁によって内と外をつなげる工夫を取り入れていった経緯などを説明。「建築を生み出すことは連続したひとつながりの世界から、ある領域空間を分節する作業なのではないでしょうか。高層建築でありながら環境にやさしく、今までと違った内外の連続性を強く持ち、日本の風土に合った建築によって、都市と建築が連なる中で建築がまちづくりを誘引し、一つの建築から都市をつくり出すという視点が重要」とまとめました。
講演後には参加者から多くの質問が上がり、山梨氏が一つひとつ丁寧に回答。さらに、最後には学生に向けて、「幼いころから常に建築のことを考えていたわけではありませんが、大阪万博で印象的な建築に触れたことで、あこがれを持つといった場面は多くありました。学生の皆さんも、建築を学びたいと感じたその原体験を大切にしてください。私自身、学生時代は建築から離れて都市デザインを勉強し、その中で人工知能について学んでいた時期もあり、その経験は今も色濃く残っています。大学の4年間は徹底的にアカデミックな部分を勉強することが大切です」とエールを送りました。