大学院工学研究科応用理化学専攻1年次生のオウ・ギョウさん(指導教員=材料科学科・松下純一教授)が11月14から18日にかけて、韓国の粉末冶金学会が主催する国際会議「ISNNM-2022(International Symposium on Novel and Nano Materials)」にオンラインで参加し、Best Presentation Awardを受賞しました。
オウさんの研究テーマは、「ジルコニア(ZrO2)添加チタン基セラミックスの酸化特性」です。導電率の高い窒化チタンの表層部を酸化した二酸化チタンは、新光触媒材料として応用が期待できますが、加熱すると結晶粒が粗大化して強度が低下するという欠点を抱えています。そこでオウさんは、強度があるだけでなく優れた熱化学的安定性も備える「ジルコニア」に着目。新たな光触媒セラミックスの開発に向けて、ジルコニアを添加した窒化チタンを酸化させたサンプルを電気伝導度や高温強度などの観点から調査しました。酸化チタンは結晶構造の違う「アナターゼ型」と「ルチル型」などに分類され、光触媒にはアナターゼ型が優れた活性を示すことが知られており、ジルコニアを添加したアナターゼ型の生成を目指して、添加する成分比率や加熱する温度を複数パターン作製して電気炉を使った酸化実験に取り組み、そのサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)やX線回折装置(XRD)で解析した結果から、添加する量には大きな違いはなく、500℃で加熱したものが新たな光触媒として最も優れていることを導き出しました。
中国から留学し、工学部4年次生から松下教授の研究室で研究に取り組んできたオウさんは、「大学2年次生の時に新型コロナ禍が始まり、その際にウイルスを不活化させる効果がある光触媒に強く関心を持つようになりました。室内の壁などをコーティングしてウイルスから保護できる光触媒の研究は、これまで以上に関心が高まると思い、研究に取り組んでいます。松下先生や研究室の仲間たちがサポートしてくれたことだけでなく、卒業された先輩方々が残してくれた研究データがあったからこそ結果を導き出すことができ、受賞につながったと考えています。今回の研究で強度のピークの値が500 ºC 付近ということが分かったので、今後は500℃前後で酸化実験を行って最適条件を見つけていきます」と話していました。