
檜垣 智也 准教授
ひがき ともなり
所属 教養学部 芸術学科
学位
博士(芸術工学)
研究分野
電子音響音楽/現代音楽/アクースモニウム/複合芸術表現
キーワード
#芸術 #音楽 #作曲 #演奏 #現代音楽 #電子音響音楽 #アクースモニウム #音楽ワークショップ #複合芸術表現
「聞くこと」による芸術表現
私は主に電子音響音楽、現代音楽の作曲をしています。特にピタゴラス(古代ギリシャの哲学者・数学者, B.C.582-B.C.496)からピエール・シェフェール(フランスの現代音楽作曲家, 1910-1995)まで追求されてきた「アクースマティック」と呼ばれる「純粋聴取による芸術表現の可能性」に着目した作品を制作しています。純粋聴取とは発音している物質的な源が隠された状態、つまり鳴り響く「響き」のみでの知覚を意味し、現代ではそれはスピーカーやイヤホンによるプレゼンテーションによって実現できます。それらを使い、なにも見えていないがたしかに聞こえている状況を作り出し、その中で音波という振動から、予兆、啓示、気配、雰囲気・存在感といった感性的側面を立ち上がらせます。私はこのようにして宗教的な畏怖、愛への信頼、自然や環境との一体感、未来への期待と死者からの眼差しといった「みえないからこそたしかに感じられること」について表現したいのです。
私の活動は、(1)作曲、(2)アクースモニウムの演奏、(3)先端音楽の啓蒙・社会連携の3つの分野で整理でき、それぞれが関わり合っています。以下にご説明いたします。
作曲活動
国内外の主要な音楽祭やコンサートを通じて作品発表し、委嘱作品も多数あります。代表作は、「Mahoroba」(フランス国立視聴覚研究所音楽研究グループ委嘱)電子音響音楽「囚われた女」(2013、第18回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品)、「家具のピアノ」(2016、高橋アキ委嘱)など。近年は詩人・吉増剛造氏、映画監督・七里圭氏との共作で電子音楽詩劇「石巻ハ、ハジメテノ、紙ノ声、……」(2023、共同利用・共同研究拠点2020年度劇場実験型プロジェクト公募研究)をはじめ、他ジャンルと融合した大規模作品の創作も行っています。

【動画資料】
①「石巻ハ、ハジメテノ、紙ノ声、……」試演@京都・春秋座20230225 吉増剛造✖檜垣智也✖七里圭
(YouTube公演ダイジェスト動画、9分)
電子音楽詩劇「石巻ハ、ハジメテノ、紙ノ声、……」京都芸術劇場春秋座 2023 写真:井上嘉和
アクースモニウムの演奏
フランスで発明された電子音響音楽に特化した多元立体音響装置「アクースモニウム」を日本へ紹介し、演奏活動を国際的に展開しています。2003年、Digital Music Festival(神戸ジーベックホール)にて国内で日本人初となるアクースモニウムによるソロコンサートを実施して以来、フランス国立視聴覚研究所音楽研究グループ、Motus音楽カンパニー、Futura音楽祭、Alcôme音楽カンパニー、Musique&Recherche(ベルギー)、ハーバード大学、ケルン大学、M.ar.e(イタリア)、釜山国際電子音楽(韓国で初のアクースモニウム公演)などで演奏してきました。国内での活動のために、わたしのラボとhirvi音楽グループで運搬可能なアクースモニウムを構築し、演奏活動をしています。大阪のザ・フェニックスホールで開催した「檜垣智也アクースモニウムリサイタル Terra incognita―知られざる大地」で令和3年度大阪文化祭奨励賞(2022)を受賞しました。

【動画資料】 檜垣智也 アクースモニウムの紹介 Introduction of the acousmonium by Tomonari Higaki – YouTube
(本人作成、YouTube、約6分)
アクースモニウムの演奏(伊丹アイフォニックホール) 写真:井上嘉和
先端音楽の啓蒙・社会連携活動
先端音楽の啓蒙、社会連携活動も行っています。Futura国際音楽祭講習会には2005年よりほぼ毎年、講師として参加しています。また、見えない音を視覚化する体験を通じて音の可能性に関心をもってもらう一般市民向けのワークショップを、神奈川県立近代美術館、愛知県児童総合センター、神戸アートヴィレッジセンター、島根県芸術文化センターなど行っています。さらにキュレーション活動も展開し、ボンクリ・フェス(東京芸術劇場)では第1回目より電子音楽の部屋の監修、奈良・町家の芸術祭「はならぁと」(2017)のキュレーションチーム代表を担当しました。またEspace du son国際空間演奏コンクール(2014)、プチット・フォルム国際電子音響音楽コンクール(2016)、CCMC電子音響音楽コンクールなど、作曲または演奏の審査員も務めてきました。

ワークショップ「音とかたち」神奈川県立近代美術館葉山2017
檜垣先生が注力しているSDGs



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わたしのラボでは、クラシック音楽からデジタル音楽、音楽と他ジャンルとの融合、楽譜の書き方から電子音響機器操作、コンピュータによる音楽表現など、時代に必要とされる音楽制作手法について幅広く学びます。仲間と好奇心を刺激しあい、クリエイティビティとオリジナリティを開花させましょう。
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プロの音楽家として、電子音響音楽や現代音楽の制作、アクースモニウム演奏活動を国際的に展開しながら、そのキャリアを活かして一般市民向けの音楽体験講座、芸術祭やコンサートのキュレーションなど、幅広く活動を行っています。わたしの活動に興味を持たれましたら、お気軽にお問い合わせいただけば幸いです。