水産学科生物生産学専攻の秋山教授が研究したタツノオトシゴの陸上養殖が事業化されます

海洋学部水産学科生物生産学専攻の秋山信彦教授(海洋学部長)が、静岡商工会議所と連携して約10年にわたって取り組んできたタツノオトシゴの一種であるクロウミウマの陸上養殖が、東京の不動産会社・株式会社ショアースによって事業化されることが決定しました。このほど、静岡商工会議所参加の新産業開発振興機構とショアース、本学部の3者で技術移転に関する契約を交わしています。今後は秋山教授の指導のもと、同社が愛媛県松山市の怒和島に養殖プラントを建設。クロウミウマ飼育のノウハウをアドバイスします。まず年間5トンの生産を目指し、3年後をめどに年間10トン程度まで増やす計画で、強壮剤などの原料として国内のサプリメントや栄養剤メーカーに販売されるほか、中国向けに輸出される計画となっています。

タツノオトシゴは中国の伝統医学では滋養強壮に効果があるとされ「海馬」の名前で漢方薬として活用されていますが、近年は乱獲や生存環境の悪化で減少しており、野生生物の取引を規制するワシントン条約の「付属書2」にも掲載されるなど絶滅が危惧されています。秋山教授は商工会議所から提案を受け、2010年から繁殖に関する研究を開始しました。それまでふ化後10日から2週間で9割ほどが死んでしまうという生存率の低さが課題でしたが、餌密度を高くしてクロウミウマ幼生の1回の摂餌行動での摂餌効率を高くしたことで生残率を上げることに成功。また、質をきれいに保てるよう水槽の環境を整えることで安定生産できるようになりました。秋山教授は、「養殖技術によって個体を増やすことで市場の需要を満たせば、自然界にいる野生の個体を獲らなくてすむようになり、天然資源の保全につながります。今後もさまざまな水産物の養殖技術開発を通じて、自然の保護と利用を両立させていきたい」と話しています。