海洋学部の李銀姫准教授らが世界海洋週間に合わせた国際的なイベントでオンラインセッション「The Voices of GENBA」を開きました

海洋学部環境社会学科の李銀姫准教授がコーディネーターを務める小規模漁業研究ネットワーク「TBTI Japan」が、6月2日に世界海洋週間に合わせた国際的なイベントでオンラインセッション「The Voices of GENBA」を開きました。TBTI Japanは2020年7月に李准教授らが国内の研究者と連携し、世界規模のグローバル・パートナーシッププロジェクト「TBTI(Too Big To Ignore:無視するには大きすぎる)」の日本支部として設立しました。今回のセッションは、TBTIが6月8日の「世界海洋の日」を祝う世界海洋週間に主催したオンラインイベント「小規模漁業オープンハウス」の一環で実施したものです。本イベントには、5日間にわたり40か国以上から250名以上の参加者がありました。 

当日はWEBビデオ会議システムZoomを使って配信し、はじめに李准教授がTBTI Japanの活動を紹介。「私たちのミッションは、日本の小規模漁業の存在意義を再認識し、その視認性を高めるとともに、小規模漁業の持続性に向けた適切なガバナンス体制を推進することにあります。そのための体系的な研究を進めるとともに、その成果を国際外に向けて積極的に発信しています」と説明しました。さらに、日本の小規模漁業の現状について説明し、「日本の漁業者の8割は沿岸漁業者であり、その9割が家族経営となっており、日本沿岸の津々浦々において小規模漁業が営まれています。世界的には“漁業先進国”とも言われていますが、実際はこのような小規模漁業は国際的な認知度が低いうえ、魚価の低迷や資源の悪化、漁家所得の低下、後継者不足など持続性に関する課題が山積しています。一方で昨年12月には、70年ぶりとなる改正漁業法が施行されていますが、この法律は漁業者の声・現場の声が十分に把握されていない側面もあり、効率性を求める成長産業化が唱えられている新漁業法下では、より一層小規模漁業の持続性が問われることになります。このような“大変化時代を小規模漁業は生きていく”ことになっています」と指摘しました。セッションではまた、「漁とともに生きる」という題で各地域の漁師の生活をまとめた動画を放映したほか、李准教授とともにTBTI Japanの立ち上げに尽力した漁港漁場漁村総合研究所の浪川珠乃氏や東京海洋大学の原田幸子氏、各地域の漁業者リーダーらによるパネルディスカッションも実施しました。 

李准教授は「小規模漁業は水産物を供給するだけでなく、生態系の保全や伝統文化の継承、地域社会の維持など多くの役割も担っています。セッションを通じて、日本の大規模漁業・企業的漁業と比べて国際的認知度が低い小規模漁業の現状を世界に発信できたことは、とても有意義なことでした。今後は、漁業でのジェンダー問題解決につながる活動にも力を注ぐとともに、各地の漁業関係者とも連携して市民の皆さんが直接小規模漁業の魅力に触れられる教育プログラムの立ち上げも検討していきます」と話しています。