医学部医学科総合診療学系精神科学領域の松成夏美医師(大学院医学研究科先端医科学専攻3年次生)と三上克央教授、国立健康危機管理研究機構国立国府台医療センター児童精神科の宇佐美政英診療科長を中心とする共同研究グループは、18歳未満の自殺未遂者の臨床的特徴を調査し、約8割が自殺念慮(死にたい気持ち)を誰にも相談していなかったことを明らかにしました。その成果をまとめた論文が4月24日に、国際学術誌『Child psychiatry & human development』に掲載されました。
日本では10代の死因の第1位が「自殺」であり、深刻な社会問題となっています。しかし、自殺未遂者が「死にたい」という気持ちをどの程度まで周囲に相談していたかについては、十分な検証が進んでいませんでした。本研究では、2019年2月から2024年11月までに医学部付属病院に搬送されて入院した、18歳未満の自殺未遂者100人の臨床的特徴を調査。医師や精神看護専門看護師、心理士、社会福祉士らの多職種チームによる通常の診療・相談の過程で本人と家族から得られた情報を基に、精神医学的評価や診断結果、自殺念慮の相談状況、学校生活の状況、自殺未遂の方法・動機などを評価・分析しました。その結果、76.0%が誰にも相談しておらず、86.0%は家族にも話していなかったことを確認。さらに、自殺未遂の理由は「不明確・曖昧」が最多で苦しみを言語化できない子どもが多く、6割近くが学校生活で困難を抱えていたことも明らかにしました。
三上教授は、「先行研究の多くは自殺未遂後に時間が経過してから質問用紙で調査したものです。本研究では、通常の診療結果が検討され、自殺未遂直後の実態を反映した結果が得られました。今回の結果から、身近な人に相談できない状況を少しでも改善することが、子どもの自殺予防につながる可能性が示唆されました。自殺を防ぐためには、誰かに相談するよう本人に促すだけではなく、日常の些細な会話を大事にし、死にたい思いを言葉にできない段階から子どもたちを支えていく環境づくりが求められます。そして、行政や福祉、警察といった公的機関や教育機関、民間団体、医療機関などの多職種が連携して地域全体でサポートするセーフティネットを構築し、家庭を支え、子どもが孤立しない仕組みを整えていく必要があります」と話しています。
※『Child psychiatry & human development』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://doi.org/10.1007/s10578-026-02008-4