医学部医学科内科学系循環器内科学領域の後藤信哉教授(大学院医学研究科代謝疾患研究センター長/総合医学研究所)がこのほど、日本バイオレオロジー学会「岡小天賞」を受賞。東京都内で開催された同学会「第47回大会」最終日の6月9日に、表彰式と受賞講演が行われました。バイオレオロジー(biorheology)は「生体および生体を構成する物質の流動と変形の科学」で、学問領域は医学、生物学、工学、物理学など多岐にわたります。同学会の創設者で、バイオレオロジーに関する世界的な研究者である故・岡小天博士の名を冠したこの賞は、同分野に関する特別な功績があり、その功績が顕著な会員に贈られています。
医師として医学部付属病院循環器内科で臨床にも携わる後藤教授は、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる血栓症の克服を目指し、血液の凝固作用を持つ血小板に注目して研究に取り組んでいます。また、日本バイオレオロジー学会の前理事長として同分野の研究を牽引。現在は国際血栓止血学会理事、日本血栓止血学会理事として循環器医療の発展に尽力するとともに、イギリス王立医学協会海外会員、オックスフォード大学ナッツフィールド公衆衛生部門訪問教授として、ビッグデータを活用した世界規模の血栓症研究にも従事しています。
受賞講演では、「血小板のバイオレオロジー」と題して30年にわたる基礎研究の成果を紹介。血管内での血小板の流れや傷ついた血管壁に結合する仕組み、結合した血管壁におけるタンパク質の変化を、流体力学やニュートンの運動方程式といった物理学の視点から原子レベルで読み解き、スーパーコンピューターで解析した成果を発表しました。
後藤教授は、「生命現象を物理現象で再構築するという試みを評価していただき光栄に思います。賞状とともにいただいたメダルはずっしりと重いものでした。それは、諸先輩方が積み重ねてきた研究の重みであり、その成果をしっかりと受け継いで次世代に引き継ぐという責任の重さでもあると受け止めています。現在は血栓症の予防法や治療薬の研究開発に取り組んでいますが、ここに至るまでには手探りで地下を進むように基礎研究に没頭した30年がありました。近視眼的にならず、長期的なスパンで研究する先にこそ光が見えてくるとあらためて感じています。今後もバイオレオロジー分野の発展に尽くすとともに、若い研究者が腰を据えて基礎研究に取り組める環境を整えるべく努めていきます」と話しています。