医学科の三浦浩美特任助教(基礎医学系分子生命科学)がこのほど、国際トランスジェニックテクノロジー学会(International Society for Transgenic Technologies=ISTT)の「Young Investigator Award」(若手研究者賞)を受賞しました。10月29日には、イスラエルを拠点に開催された同学会を母体とする「第16回トランスジェニックテクノロジー会議」(26日から29日)で、「遺伝子改変マウス作製新技術の開発―CRISPRの時代を迎えて―」をテーマにオンラインによる受賞講演を行いました。
ISTTは、今年のノーベル化学賞受賞で話題となった「CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)をはじめ、ゲノム編集や遺伝子組み換えにより遺伝子改変動物を作製する技術の発展と共有を目的として設立された学会です。若手研究者賞は、新しいアイデアと革新的な研究でトランスジェニック技術(遺伝子改変技術)の進展に大きく貢献した研究者に贈られる名誉ある賞で、三浦特任助教は同賞評価委員会の満場一致で選出されました。
三浦特任助教は、「トランスジェニックマウスに興味を持ったのは、本学医学科で卒業研究のテーマを検討していたときでした。ちょうど、基礎医学系分子生命科学の大塚正人先生を中心とする研究チームが、目的とする遺伝子改変マウスを高い効率で作製するシステムを構築しつつあった時期で、正しい場所に確実に遺伝子を挿入すれば、想定したマウスがきれいに作製できることに魅了されました」と振り返ります。卒業後は大学院医学研究科修士課程に進学し、その後も特定研究員として研究を継続。再現性の良いトランスジェニックマウスや特定遺伝子の働きを抑制するノックダウンマウスの作製技術、長鎖一本鎖DNAを用いてノックインマウスやコンディショナルノックアウトマウスを高効率で作製する遺伝子挿入技術「Easi-CRISPR法」など、極めて需要の高いモデルマウスの作製技術開発に携わってきました。さらに、こうした手法を広めるため、大塚教授とともに各国の研究者らを対象としたワークショップにも積極的に取り組みました。
受賞について三浦特任助教は、「お世話になった国内外の多くの先生方からお祝いのメッセージをいただきました。指導しサポートしてくださった先生方や仲間たちに感謝しています」とコメント。「継続してきた研究を評価していただき、たいへん光栄に思うと同時に責任を感じています。トランスジェニックマウスの作製は、医学の基礎を支える重要な技術です。目的とするマウスの完成度と作製効率をさらに高めるとともに、遺伝子治療への応用も視野に入れて研究を展開していきたい」と意欲を見せています。