スポーツ医科学研究所の丹治助教が「日本陸上競技学会大会」で優秀発表賞を受賞しました

スポーツ医科学研究所の丹治史弥助教がこのほど、「日本陸上競技学会大会」で優秀発表賞を受賞しました。同学会は、陸上競技の課題を理論的・実践的に研究した成果を現場に還元し、競技のさらなる飛躍・発展させることを目的に、シンポジウムや研究発表などを開いています。今回は「大学駅伝~過去・現在・未来~」をテーマに、一般研究発表が2月23日から3月2日にオンデマンド形式で実施され、丹治助教は「箱根駅伝出走選手と非出走選手のエネルギー代謝能力の比較」について発表しました。

本研究は、毎年1月2、3日に開催される東京箱根間往復駅伝競走に出場した選手とできなかった選手の最大酸素摂取量(VO2max:単位時間当たりにどれだけ酸素を体に取り込めるか)やランニングエコノミー(RE: 一定の速度で走る際に必要となるエネルギー消費量)を計測し、男子大学生トップ長距離選手のパフォーマンスとの関係を明らかにしたもの。丹治助教は、本研究所の宮崎誠司所長や陸上競技部駅伝チームの両角速駅伝監督、西出仁明ヘッドコーチ、栗原俊コーチ(大学院体育学研究科2年次生=当時・現付属甲府高校教諭)の協力のもと、昨年12月から1月にかけて湘南キャンパス15号館にある本研究所の共同実験室などで9名の箱根駅伝出場選手(箱根群)と7名の非出走選手(非箱根群)のデータを調査。その結果、箱根群がVO2max・REともに優れていることが分かり、とりわけREに大きな差が認められました。5000mや1万mを走るトラック競技ではVO2maxの優劣がパフォーマンスを決定する結果となった一方で、各区間20km近い距離を走る箱根駅伝では、消費エネルギーの少ない (低燃費な) 走りが重要であると報告しました。

丹治助教は、「大変光栄な賞をいただき、研究に協力していただいた皆さんに感謝の思いでいっぱいです。日本の長距離界では科学的視点での研究が十分に行われてきませんでした。『箱根から世界へ』をスローガンに掲げている箱根駅伝も例外ではなく、研究事例が少ないのが現状です。選手たちの能力を可視化することは、競技へのモチベーションにもつながると考えています。特に、実戦で力を発揮できない選手に目には見えない秘められた能力・長所をデータで提示し、今後の飛躍への可能性を伝えていきたい。本学には素晴らしい研究環境だけでなく、日本を代表するアスリートが数多くいます。この恵まれたフィールドを生かして、今後もさまざまな研究を展開していきたい」と抱負を語っています。