「ジャーナリズムは民主主義と自由にどう貢献しているか?」をテーマに講演会が行われました

政治経済学部政治学科では7月11日に湘南校舎で、東洋経済新報社の劉彦甫氏による講演会「ジャーナリズムは民主主義と自由にどう貢献しているか?」を行いました。昨年度から開講している「グローバル・ガバナンス論」の一環で実施したものです。グローバル・ガバナンス論では、政府や国際機関、NPO・NGO、自治体、企業、マスメディア、専門家など様々なアクターが地球規模の課題に挑んでいる実態について、第一線で活躍するゲストスピーカーをお招きして講義をしていただいております。地域や国境を越えて多様な問題を解決する政治的相互作用について、理論と実態の両面から理解を深めることを目指しています。

東洋経済新報社の劉彦甫氏は、私たちが普段どのようなメディアでニュースに接することがあるのか、そもそも私たちはなぜニュースに関心を持ち、社会の出来事を知る必要があるのか、という素朴な疑問からはじめて、ジャーナリズムにおける客観性や中立性という問題について学生たちと議論しながら、メディアが報じる「事実」は、現実の一部を切り取ったものに過ぎないため、ジャーナリズムにおいて絶対的な中立(neutral)や客観という概念は存在しえず、取材対象や組織から独立して偏らない(impartial)ことこそ重要で、ジャーナリズムは市民に「質の高い」ニュースを伝える必要があることを説明してくれました。また一方で、市民の側のニュースに対する「偏食」の問題を指摘し、ニュースも食事と同様、価値ある情報は高いコストを支払う方向となっている現在、情報をバランスよく収集し、自らが持っているバイアスを認知する必要性も強調されました。後半は、前半までの内容をふまえたうえで、「台湾問題」を事例にして、国際政治に関するニュースをどう読み解くのかについて論じてもらいました。具体的には、米中日関係や台湾の民主化などの背景知識を解説したうえで、メディアが報じる「事実」と国際政治の実態=「真実」がどのように異なってくるのか、米中日台のそれぞれの立場から詳しく論じたうえで、台湾に隣に位置する日本に住んでいる市民として、我々は台湾とどう関わっていくべきなのか、問いかけていました。その際に一番大切となるのは、国際政治について、ひとりひとりが知りたい、考えたいという意識を持って、自分の手で情報を収集していくことの重要性であると語りかけて講義が終わりました。学生の多くは、「メディアは何を報じるかという時点で判断を下すため、完全な中立は不可能であって、独立的な立場であることが重要だと聞き、様々なメディアや情報などを通して、多くの意見に触れて、自分の考えを培うことが大切だと思った」、「台湾問題は中国やアメリカ、日本などが関わってくるため、自分の中で単純な構造化をせずに、それぞれの立場の意見に触れて、この問題についてじっくりと考えていきたい」、「真実がそのまま私たち読者に、伝わることは絶対にないと考え、改めて一つの情報に踊らされるのでなく、その事象について異なる視点を持つメディアを通して、考えてみることが大切なのだと気づいた」などといった感想が寄せられました。劉氏による特別講義をアレンジした政治学科の平井講師は、「私たちがこれまで当たり前のように耳にし、考えてきた報道の「中立性、客観性」という概念について再考することで、学生たちにとってもメディアリテラシーを深めるきっかけとなったのではないか」と話していました。