「東京都 沖ノ鳥島・南鳥島シンポジウム」で静岡キャンパス長の山田教授と石川教授が講演しました

東海大学静岡キャンパス長の山田吉彦教授(海洋学部海洋文明学科)と、海洋学部環境社会学科の石川智士教授が、3月10日から25日までオンラインで配信されている「東京都 沖ノ鳥島・南鳥島シンポジウム」で講演しました。東京都が日本最南端・最東端の国境離島である小笠原諸島の沖ノ鳥島と南鳥島について、より多くの方に理解を深めてもらう機会にしようと企画したものです。本学では昨年12月に、東京都と連携して本学の海洋調査研修船「望星丸」(国際総トン数=2174トン)を用いた沖ノ鳥島周辺海域の研究調査を実施※。山田教授が調査責任者、石川教授が主席調査員を務め、都職員や海洋学部の教員、大学院生、学生らが望星丸で沖ノ鳥島周辺海域の学術調査に取り組みました。

小池百合子都知事によるあいさつに続いて基調講演を務めた山田教授は、「海洋立国・日本における国境離島沖ノ鳥島・南鳥島の重要性について」をテーマに、日本の広大な排他的経済水域(EEZ)の根拠となり、重要な国境離島として位置づけられている沖ノ鳥島と南鳥島の概要をはじめ、さまざまな外的要因から島を守る重要性とそのための施策を解説。12月の調査を振り返りながら、沖ノ鳥島の東小島と北小島を囲う消波ブロックやチタン製ネットによって浸食から保護をする様子などを紹介しました。さらに同じ小笠原諸島にある無人の火山島で、噴火を繰り返して陸地が拡大している西之島についても触れつつ、「東京は大都会ですが、伊豆七島や小笠原諸島も属する海が身近にある自治体であり、日本の海の三分の一は東京都の海なのです。あらためて身近な海を見つめ直し、海洋資源の開発や海水の利用、水産資源の利活用を考える必要があります。航路としての価値や観光資源、心の落ち着き、遊びの場といった情緒的な価値にも目を向け、興味を持ってください」と視聴者に語りかけました。

続いて、石川教授が「海洋調査研修船『望星丸』による沖ノ鳥島周辺における研究調査について」をテーマに、昨年12月の調査の内容や海水などの分析結果を紹介しました。石川教授は、事前に設定していた調査計画をはじめ、望星丸に搭載されている「ナロービーム装置」や「採水器付きCTD装置」といった機材、今回の調査のために用意した空撮用のドローン、いであ株式会社が開発したAUV(Autonomous Underwater Vehicle)、環境DNA採水装置などについても説明。「万全の準備をして臨みましたが、調査海域周辺では台風21号が発生してしまい、その影響で悪化した海況もあり計画を見直しせざるを得ませんでした」と語り、実施できたナロービーム装置による海底地形の観測や、水質分析・採水の結果について解説しました。「この海域における水質汚染の心配はないことが分かりましたが、次回の調査ではさらにさまざまな場所、深度で採水し、この島があることによる環境への影響を分析したいと考えています」と展望を語りました。

また、パネルディスカッション「可能性を秘めた国境離島 ~沖ノ鳥島・南鳥島の利活用を考える~」では、石川教授と望星丸による沖ノ鳥島調査航海にも同行した、いであ株式会社常務執行役員の木川栄一氏がパネリストとして参加。同じくパネリストを務めた内閣府科学技術・イノベーション推進事務局企画官の萩原貞洋氏とともに、国立研究開発法人海洋研究開発機構地球環境部門海洋生物環境影響研究センター海洋環境影響評価研究グループ主任研究員の川口慎介氏による進行の下、調査結果を踏まえながらそれぞれの専門に沿って海洋鉱物資源や環境保全と開発の関係、深海生物調査と技術開発の関係性などについて語り、今後の利活用について考えていく必要性を強調しました。

なお、シンポジウムの最後には、さかなクンお魚解説「沖ノ鳥島・南鳥島とお魚たち」も上映され、東京海洋大学名誉博士で客員准教授を務めるさかなクンが、望星丸による沖ノ鳥島調査で採取された環境DNAで分かった同島周辺に生息する魚類について、イラストを描きながら解説しました。

※沖ノ鳥島研究調査航海は、東京都と締結した「沖ノ鳥島及び沖ノ鳥島周辺海域における研究調査実施に係る協定」に基づいたもの。日本最南端に位置し、日本の広大な排他的経済水域(EEZ)の根拠となる重要な国境離島として位置づけられている沖ノ鳥島(東京都小笠原村)について、周辺海域の維持・保全や利活用につながる手がかりを得ることを目的としました。
https://www.u-tokai.ac.jp/news-notice/51713/