医学部医学科卒業生の高橋しづこさんが「女性のチャレンジ賞特別部門賞」を受賞しました

医学部医学科を2002年3月に卒業した高橋しづこさん(東京大学大学院医学系研究科非常勤講師)がこのほど、「令和5年度女性のチャレンジ賞特別部門賞」を受賞。6月24日に宇都宮市で開催された「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」で表彰式が行われ、小倉將信内閣府特命担当大臣(男女共同参画大臣)から表彰状が授与されました。この賞は、起業やNPO法人での活動、地域活動等にチャレンジすることで輝いている個人や団体などに贈られています。高橋さんは、子どもに新型コロナウイルスについて説明するための絵本『せかいがかぜをひいたから』の文章と絵を自らの手で表現し、2020年5月に発表。日本語以外の14カ国語にも翻訳されました。現在もアメリカのアーティストとともに、子どもの遺伝教育のための「遺伝学の絵本」を作成中です。これらの取り組みが、“自らの意欲と能力によって未来を切り開いていく国際的なチャレンジのロールモデルとして傑出したもの”と評価され、特別部門賞に輝きました。

産婦人科専門医、臨床遺伝専門医として診療に携わる高橋さんは、医療倫理学、生命倫理学の研究者として教育や研究にも従事しています。もともと絵を描くことが好きだったという高橋さんは、新型コロナの感染拡大で学校が一斉休校になった2020年の春、「3人の子どもの親として、医師として、コロナについて子どもたちにわかりやすく説明したい」と、イラストの作成を開始。途中、同僚の医師がコロナ感染により死亡したことを受け、使命感を持って診療に当たる医療従事者の姿や、自分も周囲の人も大切にしてほしいという願いも描き加えました。

「絵本として完成できたのは母親仲間のおかげです。アメリカ・イエール大学の友人は英語に翻訳して世界に発信する窓口になり、夫が勤務するアンダーソン・毛利・友常法律事務所の母親友達は中国語に翻訳してくれました。教え子のウクライナ人が、ウクライナ語とロシア語に翻訳してくれたことにも感動しました。今回の受賞には、男女共同参画社会の実現に向けて努力してほしいという期待が込められていると受け止めています。ジェンダーギャップの問題は、男女の産み分けといった医療倫理に重なるテーマでもあります。今後も、命のバトンがつながって今の自分があること、一人ひとりが奇跡を乗り越えた美しい存在であることを多くの人に伝える活動を続け、性別などに関係なく、誰もが生きやすい世の中をつくるために貢献したい」と語ります。

高橋さんはアメリカの大学で生物学や絵画を学んだ後、“医師である父親との約束を果たすため”に本学医学部に編入学。「画家になる夢を捨てきれず、医師になることに迷いがありましたが、組織学の授業で顕微鏡を覗きながらスケッチした絵を先生が評価してくださったことを機に自信が持てるようになりました。医学と美術の橋渡しをしてくださった先生に感謝しています。東海大の先生は、学生の熱意に必ず応えてくれます。そうした先生方との交流から、自分が進むべき道を見出していけるのではないでしょうか。大学は教えてもらうのではなく自ら学ぶ場所。学生たちにはぜひ積極的に学んでほしいと思います」と話しています。

※『せかいがかぜをひいたから』の詳細は下記からご参照ください。
https://w-lab.co.jp/special/book-covid19